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【取材】本場スペイン産生ハム、ハモン・セラーノの魅力(Jamón Serrano)

Tomoko Kato    Tokyo 30 Mayo ,2025

 

2025年4月、私はスペイン・マドリード州を訪れました。この地域を皮切りに、「一枚のハモン・セラーノ」に込められた知られざる物語と向き合うことになったのです。

このプレスツアーは、欧州連合(EU)が主導する高品質な農産物の国際プロモーション “ENJOY, IT’S FROM EUROPE” の一環として、スペイン・ハモン・セラーノ協会(Consorcio del Jamón Serrano Español)からの正式なご招待を受け実現しました。

日本でもグルメ層を中心に人気の「ハモン・セラーノ(Jamón Serrano)」は、スペイン産生ハムとして知られていますが、その背景にある制度や熟成文化、そして伝統を守る生産者たちの存在については、まだ十分に知られていません。

この連載では、協会の果たす役割や現地の生産者が大切にしている哲学、そして私が現地で体験した「ハモン・セラーノ」の魅力を、日本の皆さまに丁寧にお届けします。

 

プレスツアーレポートはこちらからどうぞ

【取材】本場スペイン産生ハム、ハモン・セラーノの魅力(Jamón Serrano)

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【取材】家族の絆から世界市場へ〜ノエル(NOEL ALIMENTARIA)の挑戦

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1. ハモン・セラーノとは何か?:スペイン産生ハムの種類と特徴

スペインでは、紀元前2世紀からすでに生ハムの製造が行われていた記録があります。その長い歴史は、今日の熟成技術と文化的価値につながっています。現在、スペインで生産される生ハムのうち、約93%が「ハモン・セラーノ」、残りの7%が「ハモン・イベリコ」とされており、その割合からもハモン・セラーノが国民的な食品であることがわかります。

ハモン・セラーノの主な原料は、白豚のランドレース種を中心とした品種です。安定した肉質と脂身のバランスに優れています。一方、ハモン・イベリコはイベリコ豚というの黒豚を用い、芳醇な味わいを生むのが特徴です。

日本では「生ハム」と、呼ばれている様々な製品があります。「生ハム」という言葉は使われていますが、食品衛生法とJAS規格において明確に定められていません。JAS法ではハム類の分類は6種類です。それらを含め熟成期間は数週間から数か月程度のものまであります。国内で一般的に流通している生ハムと言われるものの中には、早いもので一週間程度の短期間で加工され、燻製や保存料を使用して風味と保存性を高めたものがあります。

一方、スペインの「ハモン・セラーノ」は、EUの規定により最低でも30週間という長期熟成を経て、乾燥と発酵によって旨みと香りを自然に引き出します。製法や地域、原料に関しても厳格な基準があり、スモーク処理や化学的な保存料は一切使用されません。

このように、日本の生ハムとスペインのハモン・セラーノは、見た目は似ている場合があっても、原料、製法、熟成方法、風味のすべてが異なる「別物」と言っても過言ではありません。

日本では「生ハム」とひとくくりにされがちですが、実際にはスペイン産の生ハムにはさまざまな種類があります。

  • 生ハム(ハモン・クラード):非加熱で熟成された豚肉の総称。
  • ハモン・セラーノ(Jamón Serrano):白豚を原料とするスペインの伝統的な生ハム。以下の分類があります:
    • D.O.P.(原産地呼称保護)やI.G.P.(地理的表示保護)認定品
    • スペイン・ハモン・セラーノ協会認証品
    • E.T.G.(伝統的特産品)認定品
    • 一般的な非認定のハモン・クラード
  • ハモン・イベリコ(Jamón Ibérico):イベリコ豚を使用した高級生ハムで、D.O.P.や国家認定品に分かれます。

中でも、今回紹介する「ハモン・セラーノ協会認証」は、厳格な基準を満たした本物のスペイン産生ハムにのみ与えられてきた確かな品質の証です。豚肉の塩漬けと熟成は、何世紀にも渡り受け継がれてきた、まさに美食の芸術とも言えます。

スペイン・ハモン・セラーノ協会の品質保証シールが貼られたハモン・セラーノ

スペイン・ハモン・セラーノ協会のアルバロ氏(右)と視察ツアー通訳の湯澤大士ハビエル氏(左)

ICEXからの後押しの時期を説明するアルバロ氏

 2. スペイン・ハモン・セラーノ協会(Consorcio del Jamón Serrano Español):伝統と品質を守る組織

スペイン・ハモン・セラーノ協会は、1990年にマドリッドで設立されました。ハモン・セラーノが国際市場において高品質の製品として認知されるために機能しています。ICEX(スペイン対外貿易庁)からの公式認定も受けており、現在は20社の厳選された生産者が加盟しています。協会は品質基準を制定し、品質保証マークを作成し、海外でプロモーション活動を行ってきました。

生産工場は50ヶ所、輸出国は60カ国を超え、20社の年間売上高は、約9億円です。(白豚、黒豚含む「生ハム」と呼ばれるものすべて。)

 

品質にこだわる厳格な基準

ハモン・セラーノの生産において、生産工場、生産プロセス、最終の製品という3つの重要なポイントが管理され、定期的な検査と監査が行われてきました。

協会が定めるハモン・セラーノの基準は以下の通りです。

  • 100%スペイン産の豚肉を使用し、スペイン国内で生産されている
  • 最低52週間(約1年)の熟成期間
  • 減量肉の重量を少なくとも34%失っていなければならない

これらの条件は、機械だけでは測れません。現場では、熟練の職人たちが脂の入り方、香り、色合い、手触りを頼りに一つ一つを確認しています。すべてに合格したものだけが、Consercio Serranoの認証と品質のシールをつけて出荷することができます。

品質保証シールは以下です。

  • すべてのハモン・セラーノには焼き印が押されている
  • スライスされた製品には、Consercio Serranoのロゴ(S)が付いている
  • あるいは、番号付きの管理ラベルが貼付される場合もある

 

Consercio Serranoのロゴ(S)が付いているスペイン・ハモン・セラーノ協会のハモン・セラーノは、協会が制定したこれらの品質基準を厳しく守って製造されたものだけが販売されます。

名言「Donde hay jamón  Hay alegría(ハムのある所 喜びがある)」と、言うペイン・ハモン・セラーノ協会の代表(左)

品質管理のために生産工場で確認しているフアン・カルロス氏

スペイン・ハモン・セラーノ協会に飾ってあった昔の生ハムのタグ

3. 協会に加盟する生ハム生産者たち

ハモン・セラーノ協会に加盟している約20社の生産者は、それぞれが異なる規模と歴史を持ちつつ、共通して高い品質意識と「ハモン・セラーノ」ブランドへの誇りを持っています。

  • 家族経営の伝統工房
  • 最新設備を導入した近代的工場
  • 養豚から加工・熟成・輸出までを担う一貫体制の大手企業

多様な生産者が手を取り合い、「スペインの熟成生ハム文化」を守り続けています。

4. 日本に広がるハモン・セラーノの可能性

現在、協会認証のハモン・セラーノは、60〜65カ国に輸出されており、日本はその中でも第5位の輸入国。過去5年間で輸入量は着実に伸びています。しかし、日本では「生ハム=すべて同じ」という誤解も根強く残っています。だからこそ、協会は東京を中心に、飲食店やホテル、スーパーなどのプロフェッショナルに向けた3年間のプロモーション活動を展開しています。

昨年のレポートはこちら

【レポート】「スペインの至宝が東京に集結!カバとハモンセラーノの魅力を探る合同キャンペーン発表会」(CONSEJO REGULADOR DE LA DENOMINACION DE ORIGEN CAVA Y CONSORCIO DEL JAMON SERRANO ESPANOL)

2024年には、このプロモーション活動の一環として、日本人女性コルタドーラ(生ハムカットの専門職)としてスペインレストラン「フェルミンチョ」の作元のりこさんが選出されました。作元さんはスペインでの本格的な研修を経て帰国後、展示会や業界イベントでの生ハムカッティング実演やセミナーを通じて、ハモン・セラーノの魅力を日本全国に広めています。その正確な技術と情熱は、まさに“スペインの生ハム文化を伝えるエキスパート”として、食のプロフェッショナルたちからも高く評価されています。

このように、「スペイン産のハモン・セラーノとは何か?」をきちんと理解してもらい、信頼できる品質の象徴として認識されることが、今後の鍵になるといえるでしょう。

2024年5月東京日比谷にてプロモーション時

コルタドール ルーベンフェルナンデス氏(2024年5月プロモーション時)

コルタドーラ・スペインハモンセラーノ協会認定カット職人(2024年5月プロモーション時の画像)

5. 食文化としての生ハム──私が現地で受け取ったもの

スペインの生ハムは、ただの加工食品と括ることはできません。なぜなら風土、気候、職人の手仕事、時間が織りなす「文化」そのものだから。

私が協会本部で感じたのは、この「Sマーク」が、スペインの熟成食文化の品質保証であるということ。そして、それを正しく伝える責任が、私たちジャーナリストにあるということです。

「ハモン・セラーノ」という言葉が、日本の読者の皆さまにとってただの食材名ではなく、スペインの食文化の象徴として届くことを心から願っています。

スペイン・ハモン・セラーノ協会の皆さんとプレスツアーメンバー

編集後記:シリーズについて

本記事は、スペイン・ハモン・セラーノ特集の第1回です。次回からは、協会に加盟する各生産者の現場を訪れ、どのようにしてこの「スペイン産熟成生ハムの逸品」がつくられているのかを深掘りしてまいります。

ハモン・セラーノが持つ本当の価値、その物語を、ぜひ次回もご一読ください。

ハモン・セラーノの熟成期間の違いを試食

ハモン・セラーノ協会に伺った日の午後、視察したマラビージャス市場(Mercado de las Maravillas)にて

スペインワインと食協会とは

スペインワインと食協会は、「スペインワインと食文化を囲み、高品質なスペインの魅力を皆さまと体感すること」を原点に、一過性ではないスペインブームを築く活動をしています。今後もスペインワインと食を真ん中に、新しい取組みや情報をご提供して参ります。

スペインワインと食大学運営 スペインワインと食協会(日本事務局/(株)LA PASION加藤 スペインオフィス/原田)

WEB:spainwinefood.org E-MAIL: info@spainwinefood.org

 


スペインワインと食協会プロデュース「スペインワインと食大学」とは

企業と一般の人々のプラットホームとなるオトナの学び場「スペインワインと食協会(=スペ食大学)」を開催しています。

多くの人に知られていない「スペインワインと食」を見る、聞く、味わう、体験と、五感を使い楽しみながら、その業界の一流講師による貴重な講義を体験できます。ここでしか得られないリアルイベントならではの仲間との出会いは一生の宝物です。

今年も「スペインワインと食」に関する情報を、日本とスペインから、イベントの告知も含めて発信してまいります。最新情報をいち早く知りたい方は、毎週金曜日に配信しているスペインワインと食協会のニュースレター「LOHASPAIN」をご活用いただけたら幸いです。無料購読はこちらから。

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スペインワインと食協会 加藤智子/ PERIODISTA DE AGE TOMOKO KATO

福岡県出身のインポーター/ジャーナリスト。シェフ、パティシエ、ワイン販売を経て、日本の名門レストランで広報・PRを担当。飲食・流通・小売の現場経験を活かし、スペイン食材輸入販売の(株)LA PASIONを設立。2011年に「スペインワインと食協会」を創設。欧州委員会主催の農業・食品ビジネスフォーラムでは、EU加工品の専門家として講師を務めた。スペイン州政府や企業団体からは、現地展示会や生産者取材のため招聘を受けている。企画・プロデュースした人気講座「スペインワインと食大学」は、スペインの生産者や団体、日本の企業・レストランからも開催依頼が続く。WSET Level3取得に挑戦中。EUワイン・食材プロモーションを担う海外企業からの日本市場支援の依頼も相次ぐ。現場と消費者をつなぐ語り手として、企画・講演・教育活動を展開中。「LOHASPAIN」編集長。オリーブオイルソムリエ®。

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