【レポート・後編】ジュヴェ・カンプスとエル・ブリ財団:革新と伝統の融合「WINE SAPIENS III & IV Reveal」 Juve & Camps y Bullipedia Wine Sapiens III& IV
Tomoko Kato Tokyo 20 September ,2024
2024年9月2日、「ジュヴェ・カンプスとブリペディアWine Sapiens III&IV Reveal」が東京エディション虎ノ門で開催されました。スペインの名門ワイナリー「ジュヴェ・カンプス(@juveycamps)」が主催し、世界的に著名なエル・ブリ財団(@elbullifoundation_ferranadria)とともに行われた特別なイベントです。洗練された空間ではワインとガストロノミーの未来を語る場としてふさわしい雰囲気に包まれ、参加者たちは、感性を刺激する驚きと感動を味わいました。
後編では、ジュヴェ・カンプスの生産地、エル・ブリ財団が手掛ける「ワイン・サピエンス」とテイスティングについてさらに深掘りしていきます。
ジュヴェ・カンプス:革新と伝統のワイナリー
「オーガニック100%の手摘みブドウは、当社の宝です。金細工職人が宝石を扱うように、ブドウを扱っています。」そう語るCEO、4代目当主メリチェル・ジュヴェ氏率いるジュヴェ・カンプスは、1796年に設立されたスペインの老舗ワイナリーです。
北東部スペインのペネデス地方に広がる、歴史あるワイナリー「ジュヴェ・カンプス」。このワイナリーは、100年以上にわたり、スパークリングワインの新たな概念を打ち立ててきたパイオニアです。注目したいのは自然を大切にしたブドウ栽培と、環境への深い敬意です。
ジュヴェ・カンプスのブドウ園は、驚くべきことに271ヘクタールもの広さを誇り、すべてが100%オーガニックで管理されています。自然に敬意をはらい必要最低限の人の手だけで、健康的なブドウの木を育てています。また周囲の130ヘクタールに及ぶ森林再生にも取り組みつづけており、豊かな生態系を守ることを重要視しているそうです。こだわりのブドウ栽培の方法は、自然の力を引き出しながら、優れたワインを生み出すための秘訣です。メリチェル・ジュヴェ氏が「わたしたちのスタイル」という糖分を加えない「ドサージュ・ゼロ」のCAVAは、まさに、その結晶です。
家族経営でありながら、伝統を守りつつ、現代の食文化にもマッチした味わいをつくり続けるジュヴェ・カンプス。彼らのCAVAを口にすれば、自然と調和し、時を超えて愛され続けるその魅力を、きっと感じることでしょう。すでにアメリカ、カナダ、ペルー、ノルウェー、オーストラリアにおいて、トップクラスのホテルやレストランにオンリストされています。世界中の美食家から高く評価され続ける勢いは、増すばかりです。
ジュヴェ・カンプス社CEO、4代目当主メリチェル・ジュヴェ氏( @juveycamps)
エル・ブリ財団とは
エル・ブリ財団は、2013年2月7日に創設されました。フェラン・アドリア氏とジュリ・ソレール氏によって設立された財団です。
フェラン・アドリア氏は、レストラン業界に革命をもたらした存在。かつて世界中のグルメを魅了し、45席に年間200万件の予約希望が殺到した伝説的レストラン「エル・ブリ」のシェフです。「エル・ブリ」は、前衛的な料理の手法でガストロノミーの世界を一変させ、その影響力は現在も続いています。
エル・ブリ財団の使命は、3つ。
・「エル・ブリ」のレガシーの保護:世界中のレストラン業界にその知識と経験を広く共有することにあります。
・イノベーションと経営における「エル・ブリ」の経験を次世代に伝える:イノベーションと経営は起業プロジェクトの成功と存続に必須です。
・ガストロノミーを学問分野として確立する:質の高いコンテンツとして教育や独習用コンテンツを提供することにも力を入れています。
エル・ブリ財団創設者フェラン・アドリア氏(@elbullifoundation_ferranadria)
ブリペディア:レストラン業界の百科事典
エル・ブリ財団が推進する「ブリペディア」は、レストラン業界における百科事典プロジェクトです。8年以上にわたる研究成果を基に、50巻以上の事典を編纂する計画であり、レストラン業界に関するあらゆる知識を網羅しています。ブリペディアは、未来のシェフやレストラン経営者にとって貴重な学習ツールであり、自学自習にも最適です。このプロジェクトは、業界に新しい視点を提供し、ガストロノミー文化のさらなる発展をサポートすることを目指しています。
日本での「ワイン・サピエンス」発表
今回「ワイン・サピエンス」の英語版第Ⅲ巻と第Ⅳ巻が日本で発表されることになり、ジュヴェ・カンプスにとっても大きな節目となりました。この発表は、ワイン文化を広めるための重要な一歩であり、彼らの努力が実を結ぶ瞬間です。ジュヴェ・カンプスとエル・ブリ財団は、このプロジェクトを通じて、ガストロノミーとワインの未来をともに築いていくことを目指しています。
『ワイン・サピエンス』各巻のタイトルは、以下です。
第Ⅰ巻:ワインのコンテクスチュアリゼーション(文脈化)およびブドウ栽培
第Ⅱ巻:ワイン醸造および分類
第Ⅲ巻:市場からワインリストまで
第Ⅳ巻:ソムリエーー高級レストランにおけるワイン
第V巻:ワインのテイスティングという活動
第VI巻:ワインの官能分析
第VIl巻:ワインの起源と発展
第VI巻:レストランでの顧客体験
フェラン・センテイェス氏によるテイスティング
フェラン・センテイェス氏は、新たな視点でワインの世界を眺めたくなる問いかけが印象的です。
世界最古のワインリストが掲載されているといったワイン・サピエンスについての説明、ワインとは何か、またCAVAについての定義も話してくれました。
彼はただワインを語るのではなく、ワインと対話するかのように、その本質を私たちに考えさせてくれます。
たとえば「ワインは息をするのか?」という問い。ワインが単なる飲み物ではなく、特別な存在であることをわたしたちに気づかせます。さらにワインを飲むという行為は、歴史や土地、そしてそこに息づく人々の情熱を一緒に味わうことなのだ、と。
テイスティングでは、ジュヴェ・カンプスの繊細な香りと味わいをひとつひとつ解き明かしていきました。
2019年のヴィンテージは、豊かなブドウの恵みを感じさせ、非常に面白いと、いいます。一方で2017年は、厳しい気候条件にもかかわらず、ジュヴェ・カンプスが生み出したCAVAは失敗知らずの品質。これもまた、職人の手によってどれほど丁寧につくられているか、彼らのこだわりと技術の高さを示しています、と、語りました。情景を思い浮かべられるほどの表現とともに導かれるテイスティングは、どの料理と楽しみたいか、どんな方が喜びそうか、といった具体的なシーンを思い描くことができました。
エル・ブリ財団料飲責任者フェラン・センテイェス氏(@ferrancentelleswine)
最後に
ジュヴェ・カンプスとエル・ブリ財団の協力は、ガストロノミーとワインの世界に新たな視点を提供するものです。両者の共通点は「革新と伝統を融合させること」であり、その取り組みは業界に大きな影響を与えることでしょう。「ワイン・サピエンス」プロジェクトは、今後も多くのワイン愛好家や専門家にとって欠かせない存在となり、さらなる発展を遂げていくはずです。
同時に、ジュヴェ・カンプスが手がけるCAVAの背後にある物語に、ぜひ耳を傾けてみてください。それはきっと、あなたの心に新しい扉を開いてくれるはずです。
筆者がレストラン「エル・ブリ」の存在を知ったのは、2011年7月のことでした。それは、閉店のニュースとほぼ同じ時期でした。「いつか行く!」という目標すら持てなかったのです。
11月に公開された映画を観て、さらに後悔が押し寄せました。「エル・ブリ」は、まったく想像もできないようなレストランだったからです。その体験をした人だけが知る、特別な世界。それに触れることなく、幕が下りてしまったことが、本当に悔しかったです。
もし「エル・ブリ」に行っていたら、自分の価値観や人生そのものが変わったかもしれない、そう感じました。食とはただの栄養ではなく、人生に深い影響を与えるものだと気づかせてくれる経験を想像しました。
スペインワインと食協会が発足した時期も同じく11月でした。わたしたちは、上質なスペインのワインと食の情報や素晴らしさをできる限り伝えていくことを決意しました。食の喜びが、私たちの人生を豊かにしてくれることを伝えるために。わたしのように知らなかったことで誰かが後悔することがないように。知らないということは、人生の豊かさを逃してしまうこと。後悔してほしくないのです。だからこそ、ひとりでも多くの方にスペインワインと食文化を知ってほしいと切に願います。
「スペインワインが、食が、人生を変える」そんな経験を、ぜひあなたとも共有できたら協会としてこんなに嬉しいことはありません。
スペインワインと食協会とは
スペインワインと食協会は、「スペインワインと食文化を囲み、高品質なスペインの魅力を皆さまと体感すること」を原点に、一過性ではないスペインブームを築く活動をしています。今後もスペインワインと食を真ん中に、新しい取組みや情報をご提供して参ります。
スペインワインと食大学運営 スペインワインと食協会(日本事務局/(株)LA PASION加藤 スペインオフィス/原田)
WEB:spainwinefood.org E-MAIL: info@spainwinefood.org
スペインワインと食協会プロデュース「スペインワインと食大学」とは
企業と一般の人々のプラットホームとなるオトナの学び場「スペインワインと食協会(=スペ食大学)」を開催しています。
多くの人に知られていない「スペインワインと食」を見る、聞く、味わう、体験と、五感を使い楽しみながら、その業界の一流講師による貴重な講義を体験できます。ここでしか得られないリアルイベントならではの仲間との出会いは一生の宝物です。
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スペインワインと食協会 加藤智子/ PERIODISTA DE AGE TOMOKO KATO
福岡県出身のフードジャーナリスト。1997年からシェフ、パティシエ、ワイン販売など多岐にわたるポジションを経験。レストラン「アクアパッツァ」広報・PRとして活躍した後、スペイン食材輸入専門のLA PASION[現:(株)LA PASION]を立ち上げ、2011年には「スペインワインと食協会」を設立。オリーブオイルを取り入れたライフスタイルを提案し、テイスティング・食育講師としても活動。2016年からフードジャーナリストとして執筆も手がける。毎週配信のニュースレターに読者が増え続け、企業や行政からスペインワインと食関連の取材依頼が殺到している。「LOHASPAIN」WEBマガジン編集長。オリーブオイルソムリエ®。