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火山島テネリフェのミクロクリマと歴史、そしてエノツーリズム

カナリア諸島は、東からランサローテ、フエルテベントゥーラ、グラン・カナリア、テネリフェ、ラ・ゴメラ、ラ・パルマ、エル・イエロの7つの島で形成されています。6757haのブドウ畑があり、その大半はテネリフェ島、ランサローテ島、ラ・パルマ島で栽培されています。

1.テネリフェ島(47%)
2.ランサローテ島(30%)
3.ラ・パルマ島(14%)
4.グラン・カナリア島(3%)
5.エル・イエロ(3%)
6.ラ・ゴメラ(2%)
7.フエルテベントゥーラ(<1%)

今回の旅の目的は、ビーチやトレッキングではなく、なんといってもエノツーリズム(ワインツーリズム)。そこで、カナリーワインの生産量の大半を占める、テネリフェとランサローテの二島にしぼって、ボデガ(ワイナリー)を訪れることにしました。

バルセロナ空港から南西に飛ぶこと3時間15分。テネリフェ・ノルテ(北)空港でレンタカーを借りて、出発。3月の肌寒い早朝のバルセロナから一変、刺すような日差しが照りつける車内は暑く、クーラーをつけてようやく一息つきハイウェイへ。

しばらくして、目の前に突如現れた巨大なテイデ山に圧倒されました。その雄大で神秘的なパワーみなぎる光景に、この島が数々の火山噴火により誕生した火山島であることを実感しました。やっぱり実際訪れて、この目で見なかったら、この胸を揺さぶるような感動は味わえなかったでしょう。

テネリフェ島テイデ山

テイデ山(Pico del Teide/ピコ・デル・テイデ)

海抜の標高は3718mで、海底からの高さはおよそ7500mというスペイン 領内最高峰の火山、テネリフェ島は世界第三位の火山島で、山と周辺のテイデ国立公園はユネスコの世界遺産にも登録されています。

「16万年前は2倍の高さだったんですよ」と語るのは、カナリーワインの本の監修や講師として、長年カナリアワイン界を牽引しながら、自らもワイン造りをするフアン・ヘスス氏

Juan Jesús

富士山(3776 m)に迫る高さのテイデ山(3715 m)が、2倍だったなんて…!

想像しただけで、あまりのスケールに鳥肌がたちました。数度にわたる噴火によって流れた溶岩は、3つの谷をつくりました。

”勾配40%”の標識もなんのその、標高1200mの丘に辿り着きました。周囲を濃い緑色の樹海に囲まれたテイデ山を仰ぎながら、振り返ると眼下に広がる雲海に包まれて白く霞む村々。そして吹き続く湿った強い風は冷たくて、思わずジャケットをとりに車に引き返しました。

濃い樹海に囲まれるテイデ山と、薄着過ぎた筆者

 

「年間降水量が200mm前後なのに緑で覆われているのは、ビエントス・アリシオスという名の湿った風(貿易風)のおかげです。もしこの風が吹かなかったら砂漠化しているでしょう」と語るフアン氏。

その過酷な自然と恩恵とミクロクリマを実感できる貴重な体験でした。

teide

眼下に広がる雲海に包まれて白く霞む村々

tenerife

勾配40%の標識

テネリフェ島のミクロクリマ(微気候)について

島の北部と南部でも、気候はかなり違いますが、激しい標高差でも異なります。

沿岸地域 : 海抜0〜300m。乾燥しており、年間降水量は 200 mm 未満で、気温は穏やか (18ºC ~ 22ºC)。海の影響を強く受け、伝統的に灌漑農業(バナナ、野菜、花)がさかん。

       沿岸地域に広がる広大なバナナ園。現在はブドウの生産量よりも多い割合を占める

中山間地:海抜 300 ~ 600 m。貿易風(Vientos alisios ビエントス・アリシオス)の影響を受けはじめます。気温が下がり、降水量が増えます。標高600mになると海の影響は減少し、16°C から 21°C と気温差が大きくなります。

島の北部にある標高600mのブドウ畑

 

山岳地域:標高1000m以上になると、大陸性気候です。気温も下がり、寒暖差も大きくなります。年間降水量は1000mm以上。

                 島の南部にある標高1200mのブドウ畑

同じ地域でも標高が違うだけで降水量が5倍も異なり気温も冷涼になります。

私が島を訪れたのは3月中旬で、テイデ山の山頂あたりに白い雪がいく筋か見えましたが、1ヶ月前は全体が雪で覆われていたそうです。

アフリカ大陸北西部のモロッコ沖合から110kmに位置するカナリア諸島は「スペイン本土よりも暑いだろう」というイメージを持っていましたが、冬はたしかに温暖ですが、テネリフェ島の夏は、バルセロナよりも涼しいと聞き驚きました。

沿岸地域は一年中コートがほぼ必要ない、春から初夏のような気候ですが、山岳地帯は全く異なることから、テネリフェ島の収穫は、7月下旬から11月まで続く、世界一収穫期が長い産地の一つと言われているそうです。

カナリア諸島のブドウ栽培は主に中山間地 (標高 300 600 m) で行われますが、海抜 1,700 mにあるブドウ畑もあり、それはヨーロッパで最も標高の高いブドウ畑としても知られています。

カナリア諸島 ワインの歴史

カナリア諸島のブドウ栽培の歴史は、スペイン本国の歴史に比べると短く、16世紀に遡ります。カナリア諸島は、15世紀、スペインのカスティーリャ王国に征服され、スペイン領になりました。大航海時代が始まり、大西洋に位置する地の利から、ヨーロッパと新大陸を結ぶ航路の補給地となりました。

             ワインルート by Casa del Vino de Tenerife(カサ・デル・ビノ・デ・テネリフェ=ワインの家)
カナリア諸島のワインの歴史が展示されている。ワインショップと試飲コーナーも併設

そのため、スペイン人だけでなく、ポルトガル人、オランダ人、イギリス人などが、アメリカ大陸に行く前にカナリア諸島に滞在し、それぞれの国に伝わる文化、そしてワイン文化も継承しました。

その当時、帆船で大西洋を渡る長旅に耐えうる、腐らない唯一の飲料はワインでした。ブドウ畑など皆無だったカナリア諸島は、またたく間にワインの一大輸出生産地に変貌を遂げ、テネリフェ島の最初の港ガラチコは、世界最大のワインの貿易港として栄え、島民たちは100%ブドウ畑を耕しブドウ栽培やワインビジネスで生計を立てていました。

    現在のガラチコの港には、日本人彫刻家安田 侃(Kan Yasuda)氏の彫刻「Tensei Tenmoku」が

その当時のワインは、マルヴァシアを遅摘みすることで、糖度、アルコール度数を上げた甘口ワインでした。現在のカナリア諸島のワインにも、アフルタード(afrutado=フルーティーなワイン)という甘口ワインを良く見かけるので、その頃の人たちも甘口が好きだったのか尋ねると、

「甘口ワインが好まれていたというより、長旅に辛口ワインでは耐えられなかったから、必要に応じてだと思います」とフアン氏。

18世紀、スペインとイギリスの関係が緊迫したのをきっかけに、イギリスはカナリア諸島から撤退し、ポルトガルにうつり、ポルト港から大量にポートワインを輸入しました。そして、1706年のトレベホ火山の噴火を機にワイン貿易で世界一の栄華を誇ったガラチコの港町は溶岩に飲み込まれ、ワインビジネスも衰退の一途をたどりました。

ガラチコ港          噴火のため、溶岩に飲み込まれた様子を、不毛の斜面が物語っている

それから月日は流れ、長い間、カナリア諸島のワインは、それぞれの家族が自家製ワインを自家消費のためだけにつくり、輸出はされていませんでした。そんな中、20世紀最後の10年間で状況は一変しました。

次々と原産地呼称統制委員会が設立され、カナリア諸島のワインシーンは変革期を迎えました。生産と栽培面積の拡大、セクターの専門化と組織化、公的支援、新しい管理システムの実施、生産手段の改善、ブドウ品種の導入と固有品種の復活など、これらすべてが近年のカナリーワインの復興に貢献しています。数十年にわたり、ワインセクターの状況を大幅に改善し、再び世界的に注目される産地として生まれ変わりました。

現在、カナリア諸島には 11 の原産地呼称があります。

【テネリフェ島の5つのD.O.】
D.O.Ycoden-Daute-Isora
D.O.Valle de La OrotavaD.O.Valle de GüímarD.O.Tacoronte-AcentejoD.O.Abona 

                                           テネリフェ島の5つのD.O. by Casa del Vino de Tenerife


【他の5島にそれぞれのD.O.(フエルテベントゥーラを除く)

D.O.LanzaroteD.O.La PalmaD.O.La GomeraD.O.Gran CanariaD.O.El Hierro

最後に、地域レベルでは、何世紀も前にカナリア諸島が大西洋の主要港として繁栄したように、カナリアのワインを国際的なシーンでも認知されることを目標に生まれたD.O.P. Islas Canarias (Canary Wine/カナリーワイン)があります。

「常春の楽園」カナリア諸島の全人口は約220万人(2021年)。それをはるかに超える約1431万人(2017年)の外国人観光客が訪れるこの島々では、観光客に支えられる旺盛な地元市場と、外国市場の両方で販売され、カナリーワインの評価は国際的にも日に日に高まっています。その唯一無二の独自性から、世界的に著名なワインジャーナリストたちも熱い視線を向ける注目のワイン産地として、見事な復活を遂げました。

テネリフェ島 お勧めのワインShop兼Bar Vinoteca Con Pasión

カナリア諸島には約320のボデガがあり(そのうち瓶詰めしているのは242)、たくさんの種類のワインをつくっています。なかなかスペイン本国でも飲む機会がない希少なカナリーワインのお気に入りに出会えるとっておきのビノテカ(ワインショップ)があります。

Vinoteca Con Pasión (ビノテカ・コン・パシオン)は、観光客で賑わう海辺の街Puerto de la Cruz(プエルト・デ・ラ・クルス)にあり、カナリア島の上質なワインは、ほぼこのビノテカで購入することができます。その他、イビサやマヨルカなどの「島ワイン」コーナーからもこだわりを感じました。カナリーワインへの愛溢れるオーナーにどんなワインが飲みたい、と告げるだけで、お勧めのワインを熱心に説明しながらグラスで提供してくださいます。ワインはもちろん食事も楽しめる、ワインラヴァーにとっても、島のワイン生産者にとってもすこぶる評価の高いお店です。このビノテカで、お気に入りのワインを見つけてから、エノツーリズムの予定を立てるのも良いかもしれません。

Vinoteca Con Pasión (ビノテカ・コン・パシオン)Web sight

次回は、カナリア諸島の多様な固有品種と、特殊なブドウの仕立てや栽培方法、そしてエノツーリズムに役立つ情報第二弾をご紹介します。

【参考文献】
・Acerca del Canary Wine

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【関連記事】
<序章>・カナリア諸島のワインに導かれて〜プロローグ〜
<前編>・火山島テネリフェのミクロクリマと歴史、そしてエノツーリズム
<中編>・【カナリア諸島】驚愕の固有品種・栽培方法と、テネリフェ島の癒やしの別荘
<後編>・【まるで火星】カナリア諸島、ランサローテ島のぶどう畑を訪ねて

スペインワインと食協会 原田郁美

山口県出身。広告代理店でデザイナーとして勤務後、渡西。3年間のバルセロナ生活でスペインワインと食の魅力に取り憑かれ帰国後「日本とスペインをつなぐ架け橋」を目指し独立。2011年「スペインワインと食協会」設立。2012年に再び渡西。プリオラートでワインづくりとともに輸出サポート・ワインプロモーション全般、デザイン、執筆を行う。WSET ® Level 3 。

Periodista de AGE Ikumi Harada

Co-presidenta y periodista de la AGE, que se dedica a apoyar a los productores de vinos españoles para promocionar sus productos en el mercado japonés. Se mudó a España en 2012. Actualmente ofrece un servicio con el cual apoya la exportación de vinos y alimentos españoles a Japón, se encarga de hacer la traducción e interpretación relacionada con vinos españoles y la promoción.WSET ® Level 3

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