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【前編】第12回スペインワインと食大学~ビニャティゴ~カナリア諸島の固有品種を絶滅の危機から救ったワイナリー@アカデミー・デュ・ヴァン青山校 Seminario con Bodegas Viñátigo en la Universidad de AGE

Ikumi Harada    Tokyo – July 4, 2024

6月26日、第12回目の「スペインワインと食大学」において、注目の産地カナリア諸島テネリフェ島のViñátigo(ビニャティゴ)の講座を後援させていただきました。(主催:ビニャティゴ輸入元のSara Corporation, アカデミー・デュ・ヴァン青山校)ビニャティゴのワインは、その上質さと希少性のみならず、これまでのワインの価値観を覆すような特別な存在です。筆者も実際にワイナリーを二度訪れ、この講座を受講したことで、大西洋に浮かぶ火山島のテロワールが映し出された、ナチュラルでありながら洗練されたその味わいの秘密を知ることができました。

テネリフェ島の特異な環境、そしてアカデミックで深い知識を持つ醸造家一家の努力があってこそ、このようなワインが誕生したのだと実感しました。ビニャティゴのワインの初上陸は、日本においてカナリア諸島のワインのみならず、スペインワイン全体の価値と知名度を高めるきっかけになると信じています。

世界中のどの産地のワインとも一線を画す、独自性と多様性に満ちたカナリア諸島のワイン、そしてビニャティゴが、なぜ生まれたのか、その秘密をレポートしました。

スペインワインと食大学

左から、ビニャティゴ輸入元で主催者のSara Corporation代表内海紗良さん(通訳担当)、スペインワインと食協会の原田(筆者)、カナリア諸島の土着品種を救ったビニャティゴ醸造責任者フアン・ヘスス・メンデス・シベリオ氏が、自身が監修した”Canary Wine”(DOPイスラス・カナリアス出版)の本に基づいた、カナリア諸島のワインについての基礎講座を担当、ビニャティゴの品質・プロセス・研究開発担当する醸造家で、奥様のマリア・エレナ・バティスタ・エレーラ氏が、ビニャティゴのワインテイスティングのレクチャーを担当、スペインワインと食大学事務局の加藤、そしてアルゼンチン、チリ、ブルゴーニュで研鑽を積み、バスク・クリナリー・センター選出「ガストロノミー界の若き才能 100人」に選ばれた、息子のブドウ栽培家兼醸造家ホルヘ・メンデス・ディアス氏が、ビニャティゴのサスティナブルなワイン造りについてレクチャーしました。

まずは、フアン・ヘスス・メンデス・シベリオ氏の「カナリア諸島のワイン入門」についてまとめました。

フアン・ヘスス・メンデス・シベリオ氏の「カナリア諸島のワイン入門」講座

ビニャティゴ

35年以上にわたりカナリア諸島のワイン復興に尽力し、諸島の醸造家やソムリエにワイン造りを伝授してきたフアン・ヘスス氏による講座は、その経験と知識が詰まったアカデミックな内容。

フアン・ヘスス

Juan Jesús Méndez Siverio(フアン・ヘスス・メンデス・シベリオ)※写真上@bodegasviñátigo
ビニャティゴ創設者、ディレクター。メンデス家四代目として先祖から古木のブドウ畑を受け継ぐ。ラ・ラグーナ大学で科学(化学)の学位を取得。カナリア諸島独自のブドウ栽培と、科学的な知識を融合させ、島の土着品種を絶滅の危機から救ったことで世界的に高く評価されている。DOP イスラス・カナリアス会長。カナリア諸島のワイン生産者協会(AVIBO)会長。カナリアワインの公式辞典「Acerca del Canary Wine」監修。

カナリア諸島のブドウ栽培

7つの島から成り立つカナリア諸島全島におけるブドウ栽培面積:6,757ヘクタール

カナリア諸島のブドウ栽培面積の割合:

  1. テネリフェ島 – 47%
  2. ランサローテ島 – 30%
  3. ラ・パルマ島 – 14%

その他の島々は次の通りです:グラン・カナリア島、エル・イエロ島 – 各3%, ラ・ゴメラ島 – 2%, フエルテベントゥーラ島 – 1%未満
テネリフェ島、ランサローテ島、ラ・パルマ島がカナリア諸島の主要なブドウ栽培地であることがわかります。

ヨーロッパ最標高のブドウ畑:標高約1700m

海抜0mから1,689mまで、カナリア諸島のブドウはヨーロッパで最も高い標高で栽培されています。

最も栽培されている白黒ブドウ品種

白ブドウリスタン・ブランコ、マルヴァシア・ボルカニカ、ビハリエゴ・ブランコ
【黒ブドウ】リスタン・ネグロ、ネグラモル、ビハリエゴ・ネグロ

世界でカナリア諸島にしか存在しない土着品種:40種以上

新たに、20種類が確認され、現在、異なる突然変異やその他の品種が研究されています。

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カナリア諸島のワイン生産

  • Canary Wine主なワインのタイプ:白ワイン、赤ワイン、ロゼワイン、甘口ワイン、スパークリングワイン
  • カナリア諸島のDO(原産地呼称)の数:11DO
  • カナリア諸島のワイナリーの数:320軒  (瓶詰めまで行っているワイナリーは242軒)
  • カナリア諸島のブドウ栽培家数:8000人
  • 年間ワイン生産量:1000万リットル以上
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島の土壌の特徴:テネリフェ島

  1. 複雑な地質:テネリフェ島はカナリア諸島で最大かつ最も地質が複雑。

  2. 最も古い土壌:テノとアナガ地域にあり、シルトと粘土が豊富。

  3. 火山性土壌:イコッドの谷の火山性土壌は最も若い。北側の斜面には岩石質、玄武岩質、粘土質の土壌がある。

  4. 南側の斜面:主に砂質と軽石質(「ハブレ」)の土壌。高地では粘土質の土壌が見られる。

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火山の歴史を刻む
テネリフェ島の進化

テネリフェ島はカナリア諸島の中で最も複雑な地形を持つ島です。その広い面積と独特な地質学的・地理学的特性は、長期にわたる火山活動と地殻の動きによって形成されました。島の最高地点はテイデ火山(テイデ・ピコ・ビエホ複合体)で、海面から約4000メートルの高さにそびえ立ち、海底は3000メートル以上の深さに達しています。

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テネリフェの歴史を刻む
火山土壌のモザイク

テネリフェ島では、地域によって異なる火山岩の含有率が栽培に影響を与えています。特に、アナガとテノの高地では島で最も古い土壌があり、TagananaとEl Palmarでは粘土と砂のバランスが良く、良質なブドウの栽培に適しています。また、テイデ火山とペドロ・ヒル山脈は、テネリフェ島で最も活発な火山地域です。

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満席の教室には、アカデミー・デュ・ヴァン青山校の生徒の皆さまをはじめ、ワイン講師やワインインポーターの方々が集まり、真剣にフアン・ヘススの講座に耳を傾けていました。世界のワインジャーナリストや専門家から注目を集めているカナリア諸島のワインが、日本のプロフェッショナルたちからも熱い視線を浴びていることが、ひしひしと感じられました。

カナリア諸島の気候と地形
およびそれらがワイン栽培に与える影響

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気候は、ブドウ栽培に最も大きな
影響を与える要因の一つ

世界中でブドウが栽培される地理的分布を考え、温度の等温線と比較すると、ブドウ栽培と気温が10度から20度の範囲で関連していることが分かります。この範囲外でも、特定の微気候条件や専門的な管理によって品質の高いブドウが育つ例があります。カナリア諸島がその一例です。地理的には大西洋に位置し、暖かく乾燥した気候の特性を持つはずですが、実際には亜熱帯気候の特徴を示しています。

特に高地で微気候
平均気温は、2021℃

カナリア諸島は、予想される温暖で乾燥した気候とは異なり、島々の特性と地形が相互に作用して多様な気候条件が生まれています。特に高地にはさまざまな微気候が存在し、それらは共通の特徴を持っています。降水量は少なく不規則ですが、風上の斜面では年間800~1,000mmに達することもあります。雨は主に秋と冬に降り、夏は乾燥期です。低標高のランサローテ島とフエルテベントゥラ島は特に乾燥しています。

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北大西洋には、アゾレス諸島からカーボベルデ諸島に至る冷たいカナリア海流が存在します。この海流に接することで、周辺の気団は冷涼で湿度が高く、気温の調整に寄与します。特にアリシオス(貿易風)として知られる風がこの海流に影響を受け、アフリカ大陸からの気候影響を遮断し、気温の均一化に役立っています

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地形とアリシオス(貿易風)の相互作用の模式図

貿易風の厚さは、夏には1,200メートルから冬には1,800メートルに変化します。この上層部に、より暖かく乾燥した層があります。これを貿易風反転層と呼びます。この空気が地形と衝突し、反転層のために上昇できないと、水蒸気が凝結して雲が形成されます。これにより、標高1,500メートル以上では「雲海」と呼ばれる現象が生じます。この地域は、降雨や水平雨によって植物は水を供給されます。その標高より高い場所では、空気は水分を失い、乾燥した状態で山頂を越えます。そして、その乾燥した空気が急速に山を下ると、気温が上がります。

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すべてのビニャティゴのブドウ畑は、テネリフェ島の北部に位置しています。ビニャティゴのワインが共通して持つフレッシュで緊張感のある酸味、塩味、そしてミネラル感は、この特有の気候が深く影響していることが明確に感じられます。

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今まで学んできたワイン造りの常識を、気持ちよく覆される、ビニャティゴ創立者でDOPイスラス・カナリアス会長フアン・ヘスス氏の「カナリア諸島のワインの基礎講座」。レポート第二弾は、聞いたことも飲んだこともないブドウ品種のオンパレード、カナリア諸島のワインの魅力である土着品種と固有品種。フィロキセラ以前の古木のブドウ畑についてご紹介します。どうぞお楽しみに!

【続きはこちらから】
【中編】<ビニャティゴ>特別講義:テネリフェ島でコルドントレンサードが生まれた理由 Seminario con Bodegas Viñátigo en la Universidad de AGE Vol.2-第12回スペインワインと食大学

【後編】テネリフェ島独自の風土が生んだ、自根の稀少品種の味わい<ビニャティゴ>ワインテイスティング Bodegas Viñátigo en la Universidad de AGE Vol.3-第12回スペインワインと食大学

スペインワインと食大学
スペインワインと食大学

スペインワインと食協会プロデュース
スペインワインと食大学」とは

企業と一般の人々のプラットホームとなるオトナの学び場「スペインワインと食協会(=スペ食大学)」を開催しています。多くの人に知られていない「スペインワインと食」を見る、聞く、味わう、体験と、五感を使い楽しみながら、その業界の一流講師による貴重な講義を体験できます。ここでしか得られないリアルイベントならではの仲間との出会いは一生の宝物です。

▶スペインワインと食大学運営(日本事務局/(株)LA PASION加藤)

スペインワインと食協会とは

スペインワインと食協会は、「スペインワインと食文化を囲み、高品質なスペインの魅力を皆さまと体感すること」を原点に、一過性ではないスペインブームを築く活動をしています。今後もスペインワインと食を真ん中に、新しい取組みや情報をご提供して参ります。

▶スペインワインと食協会(日本事務局/(株)LA PASION加藤  スペインオフィス/原田)

WEB:spainwinefood.org E-MAIL: info@spainwinefood.org

カナリア諸島のワインについての関連記事

「スペインワインと食」に関する情報を、日本とスペインから、イベントの告知も含めて発信してまいります。最新情報をいち早く知りたい方は、毎週金曜日に配信しているスペインワインと食協会のニュースレター「LOHASPAIN」をご活用いただけたら幸いです。無料購読はこちらから

スペインワインと食協会 原田郁美

山口県出身。広告代理店でデザイナーとして勤務後、渡西。3年間のバルセロナ生活でスペインワインと食の魅力に取り憑かれ帰国後「日本とスペインをつなぐ架け橋」を目指し独立。2011年「スペインワインと食協会」設立。2012年に再び渡西。プリオラートでワインづくりとともに輸出サポート・ワインプロモーション全般、デザイン、執筆を行う。WSET ® Level 3 。Spanish Wine Specialist

Periodista de AGE IKUMI HARADA

Co-presidenta y periodista de la AGE, que se dedica a apoyar a los productores de vinos españoles para promocionar sus productos en el mercado japonés. WSET ® Level 3.Spanish Wine Specialist.

PERIODISTA DE AGE

Co-presidenta y periodista de la AGE, que se dedica a apoyar a los productores de vinos españoles para promocionar sus productos en el mercado japonés. Se mudó a España en 2012. Actualmente ofrece un servicio con el cual apoya la exportación de vinos y alimentos españoles a Japón, se encarga de hacer la traducción e interpretación relacionada con vinos españoles y la promoción.WSET ® Level 3.Spanish Wine Specialist.

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