【カナリア諸島】驚愕の固有品種・栽培方法と、テネリフェ島の癒やしの別荘
カナリア諸島テネリフェ島にフォーカスした後半は、カナリア諸島の多様な固有品種と、特殊なブドウの仕立てや栽培方法、そしてエノツーリズムお役立ち情報をご紹介します。
<前編>火山島テネリフェのミクロクリマと歴史、そしてエノツーリズム
カナリア諸島のブドウについて
カナリア諸島のブドウ栽培は、ヨーロッパの植民者たちにより15世紀にもたらされました。しかしながら、この地で栽培されるブドウは、新たな火山環境にうまく適応し、500年以上にわたり自然と人間の双方が最適な品種を選択することによって進化し続けてきました。カナリア諸島のブドウは、世界的なフィロキセラ禍の影響を受けずに生き残り、世界でも類を見ない進化の過程を示す唯一の標本として、専門家の注目を集めています。
フィロキセラを免れ独特の進化を遂げた、カナリア諸島のブドウたち
カナリア諸島(7島)の固有品種
<白ブドウ>
・Bermefuela
<黒ブドウ>
・Listán negro
・Listán rosado(Palomino finoの突然変異)
・Malvasía rosada
(Malvasía Dubrovackaの突然変異)
(Malvasía aromaticaのシノニム)
カナリア諸島の固有品種は、その大半が初めて聞くブドウ品種ばかりで驚きました。その上、7島それぞれの島にしかない超希少固有品種が存在し、今もなお発見されていることを知り、ますます驚きました。火山性の土壌から生み出された、カナリア諸島にしかない固有品種の数々…。現代のワインに求められる”独自性”という価値観にぴたりと調和しています。実際に訪れて、ますますカナリーワインの無限大の可能性に魅了されてしまいました。
さらに、それぞれの7島、独自の固有品種
ランサローテ島
<白ブドウ>
・Malvasia volcánica
<黒ブドウ>
・Breval negro
・Torrontés volcánico
→新たな11品種(公開予定)
→固有品種の突然変異(公開予定)
フエルテベントゥーラ島
→新たな1品種(公開予定)
→固有品種の突然変異(公開予定)
グラン・カナリア島
<白ブドウ>
・Albillo monte Lentiscal
テネリフェ島
<白ブドウ>
・Vallera
・Vitoriera
<黒ブドウ>
・Listán rosa(Listán negro の突然変異)
・Malvasía púrpura
・Mollar cano rosado(Mollar canal の突然変異)
ラ・ゴメラ島
<白ブドウ>
・Forastera blanc
→新たな6品種(公開予定)
→固有品種の突然変異(公開予定)
ラ・パルマ島
<白ブドウ>
・Albillo criollo
・Gual mazo
・Sabro
<黒ブドウ>
・Bienmesabe tinto
エル・イエロ島
<白ブドウ>
・Burra volcánica
・Verijadiego
・Verijadiego de El Hierro
<黒ブドウ>
・Bermejuela rosada
・Huevo de gallo
・Mollar cano rosado(Mollar canoの突然変異)
・Verijadiego negro
→新たな8品種(公開予定)
→固有品種の突然変異(公開予定)
カナリア諸島で最も栽培されているブドウ品種
<白ブドウ>
リスタン・ブランコ
マルヴァシア・ボルカニカ
ビハリエゴ・ブランコ
<黒ブドウ>
リスタン・ネグロ
ネグラモル
ビハリエゴ・ネグロ

リスタン・ブランコ
Listán blanco
アンダルシアのパロミノ・フィノは、カナリア諸島では、リスタン・ブランコとして知られています。
【特徴】
パロミノ種は淡い黄色で、香りはニュートラルですが、口に含むと素晴らしいストラクチャーが感じられます。酸度が低いため、多くの場合、早めに収穫することで、フレッシュ感を出すことができます。軽くほのかなフェンネル、ピーチ、ドライフルーツの華やかなアロマ。火山性土壌が生みだすテロワールの影響で、ミネラル感と塩味の特徴が強まります。

リスタン・ネグロ
Listán negro
カナリア諸島で最も栽培されている黒ブドウ。アンダルシアの 2 つの品種、リスタン・ブランコ (パロミノ フィノ) とネグラモール (モラー カノ) を交配した品種。なおリスタン・プリエトとは別品種。
【特徴】
色はチェリーレッドで、強いミネラルとコショウ、赤い果実 (イチゴとラズベリー) の生き生きとしたさわやかな香りと風味があります。口に含むと、タンニンは柔らかく、ライトボディで、心地よく適度に余韻のあるフィニッシュ。オークまたはコンクリートタンクで熟成することでタンニンが中和され、ワインにスパイス、バニラ、干しイチジクの葉、甘草の香りと風味が加わり、クリーミーな感覚で仕上がります。スパイシーな火山のミネラルをベースに、赤い果実とスパイスが溶け合った、長くてエレガントな後味が広がります。
世界でも類を見ない三つ編み仕立て コルドン・トレンサード( Cordón Trenzado)
ラ・オロタバ渓谷地域
D.O.Valle de La Orotava
テネリフェ島に着いて、最初に訪れたブドウ畑が、ラ・オロタバ渓谷のボデガのコルドン・トレンサード( Cordón Trenzado:編み込み仕立て)。写真では見たことはありましたが、実際目の前に広がる異様な光景に度肝を抜かれました。訪れた3月14日は、樹齢の若い木の萌芽がちらほらはじまったばかりだったおかげで、その地を這う巨大な蛇のように編み込まれた仕立ての様子がとてもよくわかりました。
ボデガに到着するまで、かなりの急斜面をくねくねと登りました。畑は標高600mをこえる高台にあり、ラ・オロタバの谷の様子がよくわかりました。この日は、暖かく青空が広がり、とてもすがすがしい一日でした。
オーナーのフリアンは、
「あなたはついていますね。こんなに快晴で暖かいのはこの時期では珍しいです。
いつもは霧に包まれています。」

「海の方に見える黄色い霞みはなんですか?」と尋ねると
「ラ・カリマ・デル・サハラ(La calima del Sáhara)です。アフリカのサハラ砂漠から風に乗って運ばれてくる砂や塵などの粒子の混合物が、風に乗って大西洋を超えてテネリフェ島にもやってくるのです。困ったものです」
と肩をすくめました。カナリア諸島が、スペイン本国よりもアフリカに近いということを改めて実感しました。
コルドン・トレンサード(三つ編み仕立て)樹齢200年以上のブドウの木も
ブドウの木は「マッチョス」と呼ばれる列をなして配置され、一般に地形の上り坂に沿って南方向に成長します。古い枝と新しい枝を一緒に編み込み長い枝を構成していきます。ブドウの木は約 0.9 メートル間隔で植えられ、枝の長さは平均で約 8 メートルですが、最大で約 20 メートルに達することも!

甘いお菓子に使われる、カベリョ・デ・アンヘル(cabello de ángel:天使の髪)
金糸瓜(キンシウリ)が混植されている
この栽培方法のお陰で、農家は何世紀にもわたって畑を 2 倍の農業用途に活用することができました。ブドウの収穫後、編み込んだ枝を解体し、90 度回転させて畑に空間をつくり、そこに、papas (カナリア諸島の小さなジャガイモ)を植えて、2月になると収穫するのです。この独特なシステムの起源説はいくつかあり、その1つをご紹介します。
昔この土地で栽培されていたブドウ品種は、枝をとても長く残して剪定した香りのよいマルバシアでした。ラ・オロタバの谷の土壌はとても肥沃なため、樹勢が強くなりすぎるので、ブドウ栽培家は、枝を結び、三つ編み仕立てにすることで、ブドウの樹勢を制御していました。
現在、バジェ・デ・ラ・オロタバでは、このブドウ畑の管理システムを世界農業遺産として守ることで、この地方のワインに、新たな付加価値をつけることを目指しています。
この原風景を大切に守っていきたいと熱く語る、
オーナーのフリアン氏

伝統料理パパス・アルガダス(Papas arrugadas:塩茹でしたイモ)と、ヤギのチーズとリスタン・ブランコ
【テネリフェ島】ボデガ併設のビラ(別荘)リナへ・デル・パゴ、ワインと癒やしの休日

リナヘ・デル・パゴ(Linaje del Pago)は、2018年に誕生したボデガ(ワイナリー)で、テネリフェ島北部にあるエル・サウサルの町に位置しています。
ボデガの隣に佇む、島の伝統的な建築を改築したビラ(別荘)は、テイデ山と太西洋に沈む夕焼けを中庭から見渡せる、プールとキッチン付きの広々としたアパートメントホテルです。
観光地は、一昔前のホテルや観光客をターゲットにした、ステレオタイプのホテルやレストランが目立つ中、喧騒を離れてゆったりした別荘で、ワインを飲みながら癒やされる最高の場所です。もちろん、ボデガ見学やワインティスティングもできます。
リナへ・デル・パゴ、オーナーのホセ・マリア氏。
その懐深い人柄と、テネリフェへの愛を映し出すような
ボデガとビラとおもてなし
D.O.Tacoronte-Acentejo(赤ワイン、ロゼ)
D.O.P.Canarias(白ワイン)に加盟しており
標高100m〜1,200mのブドウ畑で収穫



テネリフェ島に行かれる方は、ぜひ訪れてみられてはいかがでしょう?
【Bodegas Linaje del Pago】
住所: C. Herrera, 85, 38360 El Sauzal, Santa Cruz de Tenerife
Web: http://www.linajedelpago.com
テネリフェ島のワインづくりについて、前編・中編と綴ってみました。とはいえ、まだまだお伝えしきれていないことがたくさんあるのですが、ひとまず一旦テネリフェを離れて、次回、最終回はランサローテ島にフォーカスしてお届けしたいと思います。
【参考文献】
・Acerca del Canary Wine
【関連記事】
<序章>・カナリア諸島のワインに導かれて〜プロローグ〜
<前編>・火山島テネリフェのミクロクリマと歴史、そしてエノツーリズム
<後編>・【まるで火星】カナリア諸島、ランサローテ島のぶどう畑を訪ねて

テネリフェ島の美しい大自然に感動を隠せない筆者
スペインワインと食協会 原田郁美
山口県出身。広告代理店でデザイナーとして勤務後、渡西。3年間のバルセロナ生活でスペインワインと食の魅力に取り憑かれ帰国後「日本とスペインをつなぐ架け橋」を目指し独立。2011年「スペインワインと食協会」設立。2012年に再び渡西。プリオラートでワインづくりとともに輸出サポート・ワインプロモーション全般、デザイン、執筆を行う。WSET ® Level 3 。
Periodista de AGE Ikumi Harada
Co-presidenta y periodista de la AGE, que se dedica a apoyar a los productores de vinos españoles para promocionar sus productos en el mercado japonés. Se mudó a España en 2012. Actualmente ofrece un servicio con el cual apoya la exportación de vinos y alimentos españoles a Japón, se encarga de hacer la traducción e interpretación relacionada con vinos españoles y la promoción.WSET ® Level 3
