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【まるで火星】カナリア諸島、ランサローテ島のぶどう畑を訪ねて

カナリア諸島のワインについて、テネリフェ島を中心に綴っていきました。

<序章>カナリア諸島のワインに導かれて〜プロローグ〜

<前編>火山島テネリフェのミクロクリマと歴史、そしてエノツーリズム

<中編>【カナリア諸島】驚愕の固有品種・栽培方法と、テネリフェ島の癒やしの別荘

そして後編はいよいよ、ランサローテ島でのぶどう栽培についてご紹介します。

テネリフェ島を後にし、いよいよランサローテ島へ

スペインのカナリア諸島に本拠を置く地域航空会社BINTER

そこでまさかのハプニングが。カナリア諸島のローカル航空会社BINTER 22:00発ランサローテ島行き最終便が、霧のため欠航になったのです。

日中テイデ山の麓から見た雲海は確かに濃いものでした。日が沈むにつれテネリフェ島に珍しい雨が降り、上空は濃い霧に包まれました。翌朝9時から、ランサローテ島のボデガと約束があったので、どうしよう?と、同じ便に搭乗するはずだった地元の人たちと話していると、BINTERの対応はとても親切なものでした。

フライトを逃した乗客全ての予約を新たに取り直し、空港からタクシーで40分のホテルまでの送迎タクシーとホテルを保証してくれたのです。ホテルにたどり着いたのは午前0時を過ぎ、翌朝5時30分にはタクシーで再び空港に向かわなければならなかったものの、その対応はありがたかったです。

一緒にタクシーに乗り合わせたランサローテ島に住むスペイン人女性に、欠航はよくあるの?と尋ねると、こんなことは滅多にないわ、と応えました。ただ、以前グラン・カナリア島からの便が欠航になった時は、ホテルの手配など一切なかったらしく、彼女も今回のBINTERの対応に感動していました。旅にはハプニングはつきもので、それが忘れられない思い出になったりもします。テネリフェ島で、珍しい雨を体験したうえに、普通なら話すこともなかっただろう親切な地元の人たちとも接することができて、なんだか逆に「ついてる、私!」とワクワクしてきました。

テイデ山

スペイン一高い山、テネリフェ島のシンボル テイデ山(3718m)が雲の上まで見送ってくれた

翌朝は、時間通りに出発。カナリア諸島の人々がバスのように使っている小さな旅客機に乗り、約50分でランサローテ島に到着しました。カナリア諸島最大のテネリフェ島(2,034.38 km²)よりも小さなランサローテ島(845.94km²)は、カナリア諸島の中で最も北東に位置する島で、その火山活動が生み出した独特の地形から「火星のような島」として知られています。

マドリード大学で、醸造学のマスターを取得し、故郷ランサローテ島に戻り、2017年から祖父のそのまたおじいさんのぶどう畑を引き継ぎ、樹齢200年以上の古木を復活させながらワイン造りをしている若きヴィニュロン ダビッドが、島の北部を車で案内してくれました。

専門家育成カリキュラムで、ブドウ栽培の講師もしているダビッドは、自らのワインづくりへの情熱はもちろん、この島の未来のためにも、高齢化で耕作放棄地が拡大しつづけるこの島のワイン文化を、島の若者たちと力を合わせて復興させたいという強い想いを抱いています。

起伏の激しいテネリフェ島の地形に比べて、なだらかな丘陵地帯が続くランサローテ島の最高峰は標高671mのラス・ペニャス・デル・チャチェ(Las Peñas del Chache)。

なだらかな丘陵地帯が続くランサローテ島。北部

「ランサローテ島はカナリア諸島の中でも最も乾燥した島の1つで、もう5年以上雨が降っていなくて、年間降水量は80mm ~ 120 mmと、非常に少なかったのですが、今年は3月の時点で200mmも降ったんですよ」

と微笑むダビッド。飛行機は逃したものの、恵みの雨が降った翌日に島に来ることができて、私まで嬉しくなりました。カナリア諸島も、スペイン全域も、水不足は本当に深刻な問題です。

美しい白い村を抜けて、畑のあるアガナダ(Aganada)へ。

ラストラ(Rastra)と呼ばれる低い株仕立てのリスタン・ネグロ(Listán Negro)、モスカテル・デ・アレハンドリア( Moscatel de Alejandría)そして、ディエゴ ( Diego)。樹齢30年

ピコン(Picón )という火山灰。畑の湿度を保つために、ピコンを別の場所から調達し土壌を覆うことで、この畑は灌漑なしでぶどうを育てることができる


ピコンの下の土壌は湿っていた
ピコンが土壌の湿度を維持する役割をしている

Aganada アガナダ
強風アリシオス(貿易風)からぶどうを保護する
火山岩の石垣をソコ(soco)とよぶ

強風アリシオスの恩恵

カナリア諸島では、アゾレス諸島周辺の高気圧によって発生する貿易風アリシオスが、涼やかで湿った空気を伴って吹き付けます。アフリカ大陸のサハラ砂漠から吹いてくる暑い風とは対照的に、このアリシオスがフレッシュな空気をもたらすため、サハラ砂漠から直線距離でわずか100km強しか離れていないのに、ランサローテ島の温度は想像よりもずっと低めです。年間平均気温は20℃前後、夏も暑すぎず、冬も10℃以上という、一年を通して春から初夏のような気候が特徴です。と、あらゆる質問にも丁寧に答えてくれるダビッド。本よりもなによりも、学びとなる貴重な経験となりました。


アカデミックな知識とグローバルなデータをもとに
丁寧にワインづくりを実践する
ミレニアル世代の醸造家ダビッド

爆発的な溶岩流から生まれた火星のような風景

1730年から1736年の間、ランサローテ島では歴史的な噴火があり、島の約4分の1が火山礫や火山灰で覆われました。ティマンファヤ国立公園は、溶岩とマグマが生み出した、地の果て、もしくは火星によく例えられる独特な風景が広がり、島のワイン文化を代表するラ・へリア(La Geria)とも接しています。

スペイン本土、フランス、チリなど海外で研鑽を積んだ後、カナリア諸島に戻りランサローテ島で、夫婦でワインづくりを営むダニエルに、ラ・ヘリアの自社畑を案内していただきました。

表面を覆うピコン(火山灰)は、夜間に湿度を蓄え
下の土壌に浸透させ昼間は土壌を保護する役割を果たす

樹齢100年以上のディエゴ
このオヨの深さは1.6mくらいとダニエル

ぶどう畑は、島で最も重要な農作物で、島の耕作面積の29%を占め、La Geria-Masdache地域に集中しています。その多くは、海抜200400メートルの範囲内に位置するこのラ・ヘリア(La Geria)自然保護区の中にあります。

今から約300年前に起こった火山噴火の後、島の農夫たちは、火山灰の下にある肥沃な土地を探さなければなりませんでした。島でピコン(Picón)またはロフェ(Rofe)と呼ばれる火山灰を掘り、埋もれていた肥沃な土地を探し出しました。その穴にぶどうを植え、湿度を保つためにピコンで土壌を覆い、吹き続ける強風からぶどうを守るために火山岩で石垣で囲いました。このようにして、とても過酷な環境の中でもブドウ栽培が可能なシステム「オヨス(hoyos)」が生まれました。

 

「オヨス(穴)」と呼ばれる、ラ・へリアのユニークな栽培方法

強い風や砂塵からブドウを守るため石垣(soco)で囲む

この地域では、ピコン(picón)という火山灰の層があり、土壌を掘り起こしてそこにブドウを植えるための穴、オヨス(hoyos)が掘られます。畑の場所によっては、このラピリ層(ピコン)は3メートルの厚さに達することも!その場合、オヨスの直径は4メートルになり、植栽密度はますます低くなります。その穴の内部で育つブドウの木はラストラ(rastra)と呼ばれる低い株仕立てです。オヨスの周囲を火山岩の石垣ソコ(soco)で囲むことで、強風からぶどうを守ります。

ティナホやアリアなど、島の他の地域では、ピコンの厚さはラ・ヘリアよりも遥かに薄いため、オヨスではない栽培方法が行われています。
Zanjas サンハス

サンハス(Zanjas)は、ぶどうの木を畑の端に植え、区画の中心は他の作物に利用する栽培方法
土壌に、別の場所から運んできたピコンをかぶせて畑の湿度を保つ

セサル・マンリケがデザインした自然に溶け込む展望台ミラドール・デ・リオ(Mirador de Río)

「ミラドール・デ・リオ(Mirador de Río)」は、ランサローテ島の北東部のアリア市(Haría)にある、セサル・マンリケがデザインした美しい展望台です。

セサル・マンリケ(César Manrique)は、スペインのラ・パルマ島出身の芸術家、建築家、環境活動家、都市計画家で、特にランサローテ島での活動は高く評価されています。彼は、島の自然環境を保護し、美しく保つために尽力し、その美しさを生かすために都市計画においても独自の手法を発揮しました。 彼は、モダニズムと伝統的なデザインの要素を融合させた建築を、自然環境に調和させることで知られています。

展望台の中には、モダンなカフェやお土産屋、展示室があります。

ランサローテ島のユニークな自然に溶け込んだセサル・マンリケのモダンな建築自体も一見の価値があります。


大西洋に面した崖の上に建っており、360度のパノラマを楽しむことができます。
隣接するグラシオサ島の美しい風景も必見。

ランサローテ島に行かれる方は、ぜひ訪れてみられてはいかがでしょう?

【Mirador de Rio】
Web: https://turismolanzarote.com/que-visitar/cact-lanzarote/mirador-del-rio/

カナリア諸島のワインづくりについて、前編・中編・後編と綴りました。まだお伝えしきれていないディープなカナリア諸島について、また別の機会でご紹介したいと思います。

【参考文献】
・Acerca del Canary Wine

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アリシオスの強風ぶりと火星感が写真からも伝わるとうれしい筆者。ラ・へリア(La Geria)

スペインワインと食協会 原田郁美

山口県出身。広告代理店でデザイナーとして勤務後、渡西。3年間のバルセロナ生活でスペインワインと食の魅力に取り憑かれ帰国後「日本とスペインをつなぐ架け橋」を目指し独立。2011年「スペインワインと食協会」設立。2012年に再び渡西。プリオラートでワインづくりとともに輸出サポート・ワインプロモーション全般、デザイン、執筆を行う。WSET ® Level 3 。

Periodista de AGE Ikumi Harada

Co-presidenta y periodista de la AGE, que se dedica a apoyar a los productores de vinos españoles para promocionar sus productos en el mercado japonés. Se mudó a España en 2012. Actualmente ofrece un servicio con el cual apoya la exportación de vinos y alimentos españoles a Japón, se encarga de hacer la traducción e interpretación relacionada con vinos españoles y la promoción.WSET ® Level 3

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