火山島テネリフェで育まれるブドウの神秘〜プロローグ〜 Prologo〜La visita de bodegas Viñátigo en Tenerife

ビニャティゴ

火山島テネリフェで育まれるブドウの神秘〜プロローグ〜
Prologo〜La visita de bodegas Viñátigo en Tenerife

Ikumi Harada

Tenerife-April,2024

2024年、4月6日。1年ぶり、2度目のテネリフェ島の大地を踏みしめました。マドリードから南西に飛ぶこと3時間。テネリフェ島はカナリア諸島7島の中で最大の面積を誇り、東京都とほぼ同じくらいの広さ(2,034 ㎢)です。人口も約89万人と最多。島には北と南に空港があり、昨年同様、テネリフェ・ノルテ(北)空港に到着しました。スペイン本土よりもアフリカ大陸に近く「常春の楽園」と謳われる島は、太陽を求めたヨーロッパ諸国からの観光客が後をたたず、2023年は650万人ものツーリストがこの島を訪れたそうです。

テネリフェ

Puerto de la Cruz, Santa Cruz  de Tenerife

数十年前は、スペイン人のハネムーンで人気を博したカナリア諸島は、近年では、興味深いワイン産地として世界的に注目を集めています。尊敬するワインジャーナリストから「絶対訪れるべきワイン産地」と助言をいただき、20233月に晴れて、テネリフェ島と、アフリカ大陸からわずか100kmの場所に位置するランサローテ島を訪れました。度重なる火山の噴火と、大航海時代のロマン溢れる激動の歴史と、北大西洋から吹く冷涼で湿った風アリシオスと共に育まれたカナリア諸島のワイン造りに深く感動し、「カナリア諸島訪問記」を連載でお届けしました。

カナリア諸島の固有品種の救世主「 Viñátigo(ビニャティゴ)」と巡るテネリフェ島

この度、昨年訪れたワイナリー「Viñátigo (ビニャティゴ)」の創業者フアン・ヘススと、息子でブドウ栽培責任者、パルセラ(シングルヴィンヤード)シリーズの醸造も手掛けるホルヘ・メンデスと共に、テネリフェ島北部に広がる「Viñátigo (ビニャティゴ)」のユニークなブドウ畑を訪れました。辺境の場所にあり、たどり着くだけでも一苦労ですが、昨年は諦めた英雄的なブドウ畑にも足を運ぶことができました。

ビニャティゴ

Viñátigo(ビニャティゴ)」のワインとの出会いは、20225月、シウダー・レアルで開催されたスペインワインの国際見本市「FENAVIN」でした。

カナリア諸島のブドウ品種を代表する、リスタン・ブランコ、リスタン・ネグロをはじめ、ビハリエゴ・ブランコ、ビハリエゴ・ネグロ、ネグラモル、バボソ、ティンティーリャなど、10種類以上のヴァラエタルワインをテイスティング。爽やかな酸と塩味、モダンと優雅が調和した味わいと、その多様性に深く感動し、1年前のカナリア諸島訪問のきっかけとなったワイナリーです。

【写真】
左 Viñátigo    ホルヘ・メンデス @bodegasviñátigo
右 CANARY WINES   ルース・ダマス @canary.wines

Jorge
Juan Jesús

Juan Jesús Méndez Siverio : DOP Islas Canarias (Canary Wine)会長。カナリアワインの公式辞典「Acerca del Canary Wine」監修。カナリア諸島のワイン生産者協会(AVIBO)会長。

Bodegas Viñátigo
(ボデガス・ビニャティゴ)

ボデガス・ビニャティゴは、1990年にフアン・ヘスス・メンデスにより創設された家族経営のワイナリーで、「カナリア諸島の絶滅に瀕した固有品種と伝統の復興」をポリシーに、30年かけて実現してきました。フアン・ヘススは、テネリフェ島でブドウ栽培を営むメンデス家の4代目で、科学者。科学的見解も駆使しながら、諸島の多様な気候と地質条件に適したブドウ品種や栽培方法を開拓、その研究を共有しことで、カナリア諸島のワインの品質の飛躍的な向上に貢献しています。
テネリフェ島の自然に,最大限の敬意を払った、持続可能なぶどう栽培とワインづくりを行っています。

Bodegas VIñátigo Web sight

【世界遺産】テイデ国立公園、スペインの最高峰 テイデ山(PICO DEL TEIDE/ピコ・デル・テイデ)

テネリフェ島のワインづくりの奥深さを探るためには、テイデ山の存在なくして語れません。旅の最終日、私たちはテイデ山の麓まで標高約2300mまで登り、そこに広がる異世界の風景に圧倒されました。

テイデ

テイデ山(PICO DEL TEIDE/ピコ・デル・テイデ)

スペインのテネリフェ島にある海抜3718メートルのテイデ山は、海底からの高さが約7500メートルもあり、スペイン領内で最も高い山です。ハワイ島の二つの火山に続き世界で3番目に高い円錐火山であり、その山と周辺のテイデ国立公園はユネスコの世界遺産にも登録されています。カナリア諸島と言えば、バナナなどのトロピカルなイメージがありますが、テネリフェ島では、テイデ山の高地を活かして、さまざまな植物が栽培されています。

海抜0〜300mの沿岸地域は海の影響を強く受け、バナナや野菜、花の灌漑農業が行われ、海抜 300 ~ 600 mになると、貿易風(Vientos alisios ビエントス・アリシオス)の影響を受けはじめることで、気温が下がり、降水量が増えます。中山間地域になると、バナナ園を見かけなくなり、斜面に広がるブドウ畑やパパス(カナリア産のジャガイモ)の畑を目にすることができます。標高600mになると海の影響は減少し、16°C から 21°C と気温差が大きくなります。地元のワインバーで見かけたテネリフェ島産のシードラ(リンゴ酒)に驚きましたが、高標高ではリンゴ栽培もできることが理解できました。標高1,000m以上になると、気温も下がり、寒暖差もより大きくなります。なお、ヨーロッパで最も標高の高い場所に位置するブドウ畑は、テネリフェ島の海抜1,200mのトレベホ火山一帯にあります。

 

島の北側を包む雲海とテイデ山

テネリフェ島に着いたその日は、午前中まで雨が降っていたため、空港からプエルト・デ・ラ・クルスに向かう道から、テイデ山は霧で覆われ見ることができませんでした。翌日も、昨年はテイデ山をバックに最高の写真が撮れた標高1000mにあるスポットから、まるでテイデ山全体が消えてしまったかのように濃い霧のため見ることができませんでした。雲海に包まれたようなこの現象は、頻繁に観察されるそうで、貿易風アリシオスによって運ばれてくる雲が、島の北側にある山々に遮られ、標高600〜1,800mのところに留まるためです。テネリフェ島北部は常に霧に包まれ、南部はカラリとした晴天のため、車窓から見た風景も、そこに生息する植物も明らかに異なります。この違いはもちろんブドウにも影響します。

「年間降水量が200mm前後なのに緑で覆われているのは、北大西洋から吹くアリシオスという名の湿った風のおかげです。もしこの風が吹かなかったら砂漠化しているでしょう」

と語るフアン・ヘスス氏の言葉を思い出しました。

テイデ山

2024年4月8日。3週間前まで、山頂には雪が積もっていたという。まるで、その先に巨大な火山が存在しないかのような風景。

テネリフェ島 テイデ山

2023年3月。緑豊かな樹海に包まれるテイデ山。テイデ山をここから拝めたのは幸運だったことを知る。

標高700mから1200m付近には、カナリアスギ(Canary Island Pine)の森が広がっていました。昨年の大規模な山火事の影響で、場所によっては茶色に変色した光景は痛々しかったですが、緑の芽吹きが車窓からもはっきりと確認できました。

標高2000mの地点には、雲海は届かず目の覚めるような鮮やかな青い空が広がっていました。ほとんどの植物が生きることができない、月面のクレーターのような、時に火星を思い起こさせる岩山が広がっていました。巨大な岩々が噴火によって吹き飛ばされたかと思うと、マグマのパワーの凄まじさに圧倒されます。

「タイタンの戦い(2010)」「ジェイソン・ボーン(2016)」「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)」など、多くのハリウッド映画の舞台となったのも頷ける、壮大な風景に驚きました。

teide

Minas de San José(ミナス・デ・サン・ホセ)
アポロ計画の宇宙船が月面に着陸した際、この場所そっくりの景色が発見されました。クレーターは滑らかで、滑りやすい火山性の土壌で覆われています。このため、ミナス・デ・サン・ホセは月の探査に使用される車両や機器の試作テストの場所として利用されました。

【写真右】Viñátigo Ensamblaje Tinto
カナリア諸島の黒ブドウ品種をブレンドした赤ワインで、テネリフェ島北部の素晴らしいテロワールを表しています。
この日見た風景を彷彿とさせるエチケットが印象的。
テイデ
テイデ

地層の色の交互作用

それぞれの層は異なる噴火によって、数日または数週間かけて堆積します。層の間には何世紀、あるいは何千年も経過した可能性があります。

これから数回にわたり、テネリフェ島のテロワールと、「Viñátigo(ビニャティゴ)」のワインづくりに迫ってまいります。

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スペインワインと食協会 原田郁美

山口県出身。広告代理店でデザイナーとして勤務後、渡西。3年間のバルセロナ生活でスペインワインと食の魅力に取り憑かれ帰国後「日本とスペインをつなぐ架け橋」を目指し独立。2011年「スペインワインと食協会」設立。2012年に再び渡西。プリオラートでワインづくりとともに輸出サポート・ワインプロモーション全般、デザイン、執筆を行う。WSET ® Level 3 。Spanish Wine Specialist

Periodista de AGE IKUMI HARADA

Co-presidenta y periodista de la AGE, que se dedica a apoyar a los productores de vinos españoles para promocionar sus productos en el mercado japonés. WSET ® Level 3.Spanish Wine Specialist.

PERIODISTA DE AGE

Co-presidenta y periodista de la AGE, que se dedica a apoyar a los productores de vinos españoles para promocionar sus productos en el mercado japonés. Se mudó a España en 2012. Actualmente ofrece un servicio con el cual apoya la exportación de vinos y alimentos españoles a Japón, se encarga de hacer la traducción e interpretación relacionada con vinos españoles y la promoción.WSET ® Level 3.Spanish Wine Specialist.