【レポート】『SPAIN FUSION TOKYO 2024』〜Morning Session〜

【レポート】『SPAIN FUSION TOKYO 2024』〜Morning Session〜

Tomoko Kato    Tokyo 4 October ,2024

 

2024年9月11日、コンラッド東京の洗練された空間で、スペイン料理界にとって特別な一日が始まりました。それは『SPAIN FUSION TOKYO 2024』。このイベントは、スペインで長い歴史を持つ「マドリード・フシオン」の日本版として初めて開催されました。日中の第1部 Morning Sessionと、夜の第2部 Night Out 祝賀パーティーからなる2部構成です。今回は第1部 Morning Sessionをレポートします。

セミナー会場

セミナーステージ

『SPAIN FUSION TOKYO 2024』の幕開け

 

東京の真ん中で、スペインの美食が花開いた日。昨今、スペインは、世界のレストランシーンのトップに君臨し、多大なる影響があります。この日、スペインの伝統と最新ガストロノミーが、東京という舞台で華麗に交差したのです。日本で初めて開催された世界最大級の料理学会『SPAIN FUSION TOKYO 2024』は、まさに料理の祭典。セミナーでは、ミシュラン星付きシェフやグルメ専門家、マスターオブワインと、錚々たる方々がその卓越した技術と情熱を余すところなく披露し、参加者たちは、その一瞬一瞬に見入っていました。

このイベントは、スペインのガストロノミー文化を日本に届けるサテライトイベントで、マドリードで22年間開催されている世界的な料理学会「マドリード・フシオン」の日本版です。スペインの新しい味わいと食材が今をときめく一流の講師陣によって実演されたり、試食できたりするのですから、それはそれは貴重なひとときです。シェフや料理人、食品業界関係者、さらには料理を学ぶ学生に至るまで、幅広いジャンルの人々がまたとない機会を楽しみました。このようにリアルな「体験」と共に日本市場に紹介されることで、訪れた人たちは、ただ学ぶだけでなく、未来の料理を感じ取ることができたはずです。

マドリード フシオン アリメントス デ エスパーニャ(Madrid Fusión Alimentos de España)とは

 

「マドリード フシオン アリメントス デ エスパーニャ(Madrid Fusión Alimentos de España)」とは、スペインのマドリードで22年開催されてる世界的に有名な国際料理学会です。

【2024年のマドリード フシオン アリメントス デ エスパーニャの実績】

【Spain Fusionの開催国】

  • 2022年 Spain Fusion Texas – Dallas, Austin & San Antonio(アメリカ、ダラス)
  • 2023年 Spain Fusion Bonn(ドイツ、ボン)
  • 2023年 Spain Fusion Texas – Houston, Dallas, San Antonio & Austin(アメリカ、ヒューストン)
  • 2024年 Spain Fusion Munich(ドイツ、ミュンヘン)
  • 2024年 Spain Fusion Zurich(スイス、チューリッヒ)
サイトより一部抜粋(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000146719.html)

スペインガストロノミーとの出会い

 

会場に入ると、スペインの香りと活気が溢れ、期待に満ちた空気が広がっていました。トップシェフや専門家が登壇し、多彩なプレゼンテーションが繰り広げられました。実演に加え、前のめりになって見惚れるほどクオリティの高い動画も流れます。たとえ知っている食材であっても、これまでもっていた概念と視点が、ガラリと変わっていくのです。料理の未来を見据えた技術とアイデアが次々と披露され、訪れた人々はスペイン料理の世界に一歩踏み込んだ感覚を味わえたのではないでしょうか。

五感をつかった体験の場

 

イベントでは、参加者が実際に料理を見て、試食できる機会が提供されました。シェフたちの技術を目の前で見ることができ、ただ学ぶだけでなく、体験を通じて料理の未来を感じ取ることができたのです。デモンストレーションで見て、聞いて、作りたての味わいを香り、食す。5感をフルに使う、贅沢なひとときです。

チキンや仔牛を使った料理とマリアージュしたワインと共に実食。

 Morning Session プレゼンテーションエリアのスケジュール

 

当日は、以下のスケジュールが組まれていました。

11:30  開催の挨拶

グルメ専門家のアルフォンソ・フェルナンデス氏とVocento Gastronomía ジェネラルディレクター ベンジャミン・ナラ氏

 

11:40  蜂蜜 ~単なる甘味料以上の天然甘味料~

ミシュラン2つ星レストラン Mugaritz (スペイン、エレンテリア)アンドニ・ルイス・アドゥリス氏によるプレゼンテーション&ショークッキング

12:20   ワイン&ハモン ~素晴らしい独自のハモンとワインの組み合わせ~

マスター・オブ・ワインのフェルナンド・モラ氏とJCHA一般社団法人日本生ハム協会代表理事渡邉直人氏

 

13:30  海の象徴~マグロと塩~

ミシュラン三つ星レストラン Quique Dacosta (スペイン、デニア)キケ・ダコスタ氏によるプレゼンテーション&ショークッキング

 

14:05  オリーブオイルとビネガーのテイスティング&料理への応用:冷たいスープ&ポタージュ

グルメ専門家アルフォンソ・フェルナンデス氏とシェフ ペリコ・オルテガ氏によるプレゼンテーション&ショークッキング

 

15:45 –  El Celler de Can Rocaの料理におけるワイン

ミシュラン三つ星レストラン El Celler de Can Roca ( スペイン、ジローナ)ジョルディ・ロカ氏、マルク・ロカ氏、マルティ・ロカ氏によるプレゼンテーション&ショークッキング

 

16:25   白に染まるスペインガストロノミーの世界:スペインのガストロノミー製品&ワイン

マスター・オブ・ワイン フェルナンド・モラ氏とミシュラン掲載レストラン MASIA(日本、東京)マテウ・ビジャレット氏よるプレゼンテーション&ショークッキング

海の象徴~マグロと塩~

ミシュラン三つ星レストラン Quique Dacosta (スペイン、デニア)

キケ・ダコスタ氏

料理のインスピレーションはさまざまなところから。例えば焼畑を目にした時に発想した料理なども。

El Celler de Can Rocaの料理におけるワイン

ミシュラン三つ星レストラン El Celler de Can Roca ( スペイン、ジローナ)

ジョルディ・ロカ氏、マルク・ロカ氏、マルティ・ロカ氏

「イノベーションが大切であるが、ルーツを忘れてはいない」と語り、今回のテーマ「ワイン」についてのエレメントを説明する

魚介にワインを使ったソースが紹介された。シェリー&海老、ムール貝&アルバリーニョ、牡蠣&カバという組み合わせ

白に染まるスペインガストロノミーの世界:スペインのガストロノミー製品&ワイン

マスター・オブ・ワイン フェルナンド・モラ氏によるセミナー

多様性があるスペインワインが多角的に説明される

「このワインのマジックは・・・」ティスティングのワインについての説明がわかりやすく、マリアージュさせる料理例も豊富

ミシュラン掲載レストラン MASIA(日本、東京)

マテウ・ビジャレット氏

マテウ氏の料理のベースになっているものや日本でスペインレストランを手がける意味を語ると共に

実際にレストラン「MASIA」で提供されている味わいも紹介された

「仔牛の料理には、油分をすっきりさせつつ、仔牛に負けないボリュームも必要とする。だから熟成12ヶ月でアンフォラを使用したワインを合わせる」といった、具体的なマリアージュも紹介された

セミナーの様子

 

このレポートでは、先のセミナースケジュールの中から、今回はまだどこにもレポートが書かれていない『オリーブオイルとビネガーのテイスティング&料理への応用:冷たいスープ&ポタージュ』というテーマにフォーカスします。講師を務めたのは、グルメ専門家のアルフォンソ・フェルナンデス氏と、スペイン料理のスペシャリストであるマリア・ヒメネス・ラトーレ氏。彼らは、まるでライブのような臨場感あるセミナーで、スペインの誇るオリーブオイルとビネガーの世界を深く掘り下げました。

 オリーブオイルの世界

 

セミナーの始まりは、スペイン産オリーブオイルの紹介からでした。オリーブオイルは、単なる調味料ではなく、スペイン料理に欠かせない主役の一つ。アルフォンソ氏は、オリーブの種類や製造過程、さらにその健康効果について丁寧に説明してくれました。

オリーブオイルの味や香りは、オリーブの品種や栽培地域によって大きく異なります。スペインでは、ピクアルやアルベキーナなど、豊富な品種が栽培され、それぞれの特徴を持っています。これらのオリーブがどのように育てられ、オイルがどのように絞られるのかを詳しく紹介しました。またオリーブオイルが持つ健康効果についても触れられました。とくに、心臓の健康を守る抗酸化物質やビタミンEが豊富に含まれていることは、スペイン料理が「地中海式食事」として注目される一因です。

ビネガーの歴史と魅力

 

次に紹介されたのは、ビネガーです。ビネガーは、料理に深い酸味と複雑な味わいを与える重要な調味料です。とくにスペイン産のビネガーは、その品質で世界的に知られています。ビネガーの歴史や原産地呼称制度(D.O.)についても説明がありました。ポイントとなるのは、スペイン特有の「シェリービネガー」。シェリー酒を使って作られ、独特の深い風味が特徴です。その旨味の秘訣でもあるスペインならではの「ソレラシステム」という熟成方法も、丁寧に説明してくれました。このシステムでは、異なる年のビネガーを混ぜ合わせることで、複雑な味わいを生み出します。

テイスティング体験

 

セミナーの後半では、オリーブオイルとビネガーのテイスティングが行われました。テイスティングの方法も具体的に示され、参加者一人ひとりが、オイルやビネガーの香りや味わいを確かめました。オリーブオイルやビネガーをテイスティングする際、重要なのはアロマ(香り)です。講師たちは、鼻で香りを感じることから始め、口に含んだときの味わいの広がりまでを丁寧に説明しました。味や香りは、各人の経験や感覚によって大きく異なるため、当たり前ですが講師とまったく同じ表現になるとは限りません。テイスティングを重ねていくほど、臭覚、味覚や表現力も鍛えられていきます。経験を積むとコメントの幅も広がってくるため、自分だけの表現が見つかることも興味深いポイントです。

冷たいスープ&ポタージュの実演

 

セミナーの締めくくりは、マリア・ヒメネス・ラトーレ氏による冷たいスープ&ポタージュの実演です。彼女は、オリーブオイルとビネガーの活用を最大限に活かした料理を披露し、参加者たちはその技術に見入っていました。

 

ガスパチョやアホ・ブランコ

スペイン料理の冷たいスープといえば、ガスパチョやアホ・ブランコが有名です。これらの料理は、とくに夏の暑い時期にぴったりで、オリーブオイルやビネガーが風味を引き立てます。レシピを説明しながら繰り広げられる手際よい調理。参加者たちは息を飲み、料理の完成を待ちわびました。

まとめ

このセミナーは、一言でいうと、新たにスペイン産オリーブオイルの奥深さを感じさせてくれました。そもそも筆者は、15年ほどスペイン産オリーブオイル事業を手掛けており、オリーブオイルソムリエ®︎でもあります。アルフォンソ氏のセミナーも過去3回ほど体験しています。それでもなお、今回、発見が数多くありました。アルフォンソ氏がいかに専門家たるべく、知識に磨きをかけ、現場を知り、生産者たちとコミュニケーションを取り、市場を理解しようと努めているか。そのスタンスが世界で活躍し続ける秘訣なのだと、改めて、尊敬の念に溢れました。

スペイン産オリーブオイルとビネガーを初めて学ぶ方にも、単なる知識を得る場ではなく、五感で体験する素晴らしいひとときだったことでしょう。アルフォン氏のナビゲートとともにオリーブオイルやビネガーが持つ奥深い魅力を感じ、マリア氏の料理への応用を実際に学べるこの機会は、料理を愛する人々にとって、特別な時間となったに違いありません。ジャーナリストとして日本で伝える筆者にとっても、アルフォンソ氏が最後に伝えてくれたことが忘れられません。「エキストラバージン・オリーブオイルは、確かに少し高価です。けれども実演で示したように、たくさんつかう必要はありません。ほんの少量で、スープの味わいがこれだけ大きく変わり、より深みのあるものになります。少量でこれだけの効果があることを考えると、総合的に判断するとオリーブオイルはとても優れた調味料に間違いありません。」まさに、シンプルで的を得たひとこと。みなさん、スペイン産オリーブオイルとビネガーをつかって、ぜひ料理をつくり、その味わいを体験してみてください。

セミナー会場隣のスペインワインと食材展示会場

最後に

 

このイベントには、シェフや料理人だけでなく、食品業界の関係者や料理を学ぶ学生たちも参加していました。料理の知識と技術を学ぶ場として大いに役立ったに違いありません。歴史ある素材、新たに生み出されたもの、そして新しい概念を踏まえた未来の料理に触れられるこの機会は、参加した多くの人々にとって忘れられない体験となったに違いありません。名だたるシェフたちが登壇し、その技術を惜しみなく披露する場、料理の新たな可能性を感じさせてくれるプレゼンテーションやショークッキングを一度に体験できるなどこれまでになかったからです。

『SPAIN FUSION TOKYO 2024』は、スペインのガストロミー文化が日本の食シーンに新たなインスピレーションを与え、料理の可能性を広げる場となりました。日本とスペインが料理を通じて繋がり、訪れた人々はその交差点で未来を感じ取る素晴らしい時間を過ごしたことでしょう。

次回は、Night Out 祝賀パーティーのレポートをご紹介します。どうぞおたのしみに。

Vocento Gastronomía のLuis Martí López-Amor氏(右)日本国内代理店 株式会社EAT8 荒井百花氏(左)と筆者

Madrid Fusión Alimentos de EspañaおよびSpain Fusion 主催:Vocento Gastronomía

Vocento Gastronomíaの日本国内代理店:株式会社EAT8

株式会社EAT8について

私たちはスペイン企業が日本市場での魅力を最大限に伝えるためのプロモーション活動や企業支援を行っています。代表取締役の荒井百花は、スペイン農業漁業食料省・ICEX後援の諮問委員会の委員を務めており、その知見を活かして日本市場でのスペイン食品・飲料の地位向上に尽力しています。

サイトより抜粋

スペインワインと食協会とは

スペインワインと食協会は、「スペインワインと食文化を囲み、高品質なスペインの魅力を皆さまと体感すること」を原点に、一過性ではないスペインブームを築く活動をしています。今後もスペインワインと食を真ん中に、新しい取組みや情報をご提供して参ります。

スペインワインと食大学運営 スペインワインと食協会(日本事務局/(株)LA PASION加藤 スペインオフィス/原田)

WEB:spainwinefood.org E-MAIL: info@spainwinefood.org

 


スペインワインと食協会プロデュース「スペインワインと食大学」とは

企業と一般の人々のプラットホームとなるオトナの学び場「スペインワインと食協会(=スペ食大学)」を開催しています。

多くの人に知られていない「スペインワインと食」を見る、聞く、味わう、体験と、五感を使い楽しみながら、その業界の一流講師による貴重な講義を体験できます。ここでしか得られないリアルイベントならではの仲間との出会いは一生の宝物です。

 

今年も「スペインワインと食」に関する情報を、日本とスペインから、イベントの告知も含めて発信してまいります。最新情報をいち早く知りたい方は、毎週金曜日に配信しているスペインワインと食協会のニュースレター「LOHASPAIN」をご活用いただけたら幸いです。無料購読はこちらから

スペインワインと食協会 加藤智子/ PERIODISTA DE AGE TOMOKO KATO

福岡県出身のフードジャーナリスト。1997年からシェフ、パティシエ、ワイン販売など多岐にわたるポジションを経験。レストラン「アクアパッツァ」広報・PRとして活躍した後、スペイン食材輸入専門のLA PASION[現:(株)LA PASION]を立ち上げ、2011年には「スペインワインと食協会」を設立。オリーブオイルを取り入れたライフスタイルを提案し、テイスティング・食育講師としても活動。2016年からフードジャーナリストとして執筆も手がける。毎週配信のニュースレターに読者が増え続け、企業や行政からスペインワインと食関連の取材依頼が殺到している。「LOHASPAIN」WEBマガジン編集長。オリーブオイルソムリエ®。