バレンシアの美食・ガストロノミー・テイスティング ~ 一流シェフの共演

Vicky Sevilla

バレンシアの美食・ガストロノミー・テイスティング ~ 一流シェフの共演

3月5日、「バレンシア州ガストロノミー・テイスティング・イベント」が開催されました。

IVACE+I(バレンシア州政府商業支援室)が主催、スペインから来日した一流シェフによる伝統的料理を通してバレンシアの美食とワインを体験できるイベントです。

バレンシア州はスペインの東部に位置し、バレンシア県・アリカンテ県・カスティジョン県の3県からなる自治州。東側には地中海沿いの美しい海岸、そして内陸部には山岳地帯が広がり、その地理的特徴や温暖な気候条件がバレンシア州の豊かな食文化を育んできました。

バレンシア料理の中でも有名なのは『パエリア』。同じ米文化を持つ日本人には最も馴染みのあるスペイン料理のひとつですが、水田地帯であるアルブフェラ湖畔が発祥の地と言われ、バレンシア地方にはパエリア以外にもお米を使った料理が多いそうです。

お米料理だけではなく、海と山に囲まれイスラムの影響を受けた独自の食文化が生まれたため、バレンシアに行かなくては食べられない料理もあると聞きます。

それをこの日は東京で、それも4人のトップシェフの共演で振るまわれるという稀有な機会とあり、会場には多くの関係者が集まりました。

会場となった日本食品総合研究所は渋谷区代官山駅から徒歩数分。ガラス張りの明るいキッチンスタジオでは、『L’EXQUISIT mediterrani』極上のメディティラニ (注)のロゴ入りシェフコートに身を包んだシェフ達の姿が浮かびあがり、その様子はさながらライブ・クッキングショー。

(注)「Comunitat Valenciana – L’Exquisit Mediterrani」(バレンシアのコミュニティー 極上のメディティラニ)ブランドは、バレンシアの卓越した美食、つまり最も洗練された地中海料理の価値を表す中心的な要素です。

(バレンシア観光協会公式WEBサイトより抜粋)

バレンシア

ゲストはスペイン食関連業界の来賓に、FOODEX JAPAN 国際食品飲料展のために来日したスペインからの生産者も加わり50名ほど。バレンシア産のワインを片手に、シェフ達の手により次々と料理が仕上げられていくプロセスを楽しんでいました。

パレンシア

開会にあたり、IVACE+I 新規国際ビジネス推進ディレクターであるエステル・オリバス・カセレスさんからのご挨拶と、バレンシア州についてのお話がありました。バレンシア州は豊富な食材の宝庫であり美食をに力を入れているとのことです。続いてシェフ4名が登壇しました。来日したシェフはスペイン国内外で活躍するいずれもバレンシアに所縁のあるトップ料理人ばかり。それぞれの自慢のお料理を前に説明を聞きながらいよいよ実食です。

シェフのプロフィールと実際に提供された料理をご紹介します。(敬称略)

Vicky Sevilla(ビッキー・セビージャ)

Arrels レストランのシェフ。スペインでミシュランの星を獲得した最年少の女性~

ビッキーシェフの一品は「Atún encebollado en frío con jugo de tomate y manzanilla 地中海マグロと玉ねぎの冷製・トマトとマンサニージャのムース添え」

一般的なAtún encebolladoと趣向を変えて煮込まず冷製のままムース添えにしている独創的な作品。軽くマリネされた小玉ねぎときゅうりのピクルスも引き立て役となり、爽やかさがバレンシア産の白ワインに好相性。とても人気のあるひと皿でした。

ビッキー・セビージャ
矢ノ目欽一

Vicente Rioja(ビセンテ・リオハ)

Hotel Rioja レストランのシェフ。スペインで有名なバレンシア風パエリヤで知られている~

ビセンテシェフの作るパエリアは一見普通の魚介のパエリアのようですが、食べてびっくりただのパエリアではありませんでした。大きなエビはさっと火を通しただけのミディアムレア。殻を剥くと濃厚なエビミソがとろけ出し、パエリアの上に広がりソースとなって渾然一体となりました。新鮮な食材だからできるパエリアです。

Ulises Menezo(ウリセス・メネゾ)

Shinkai Tastem 及びHonooKaido Sushi Bar などのバレンシアのレストランを擁するTASTEM Group のディレクター及びプロジェクト・マネジャー。Edomae Sushi は開店以来ミシュランの星を獲得している~

・矢ノ目欽一

TASTEM GroupKaido Sushi Bar のシェフ。スペインで最高のスシマンとして認められ、世界的なスシ・チャレンジで5位に入賞した~

矢ノ目シェフの作品は「マグロのタルタル・雲丹と黒トリュフのコカ(風)」「白米のオリーブオイル和え、黒トリュフとキャビア風スフェリフィケーション(粒状化させたゼリー状のもの)」の2種。

どちらの料理にもバレンシア産の黒トリュフがたっぷりとトッピングされ、山の幸と海の幸の双方を調和させた、バレンシアらしさ溢れるモダンなプレゼテーション。

マグロのタルタル・雲丹と黒トリュフのコカ(風)
by 矢ノ目欽一

Atún encebollado en frío con jugo de tomate y manzanilla
(地中海マグロと玉ねぎの冷製・トマトとマンサニージャのムース添え)
By Vicky Sevilla(ビッキー・セビージャ)

4名のお料理はどれもクリエイティビティに満ち、ひと口食べれば思わず頷いてしてしまうような楽しさや隠し味が施され、シェフの料理に込めた想いや意図が食べる側にもストレートに伝わってきます。美味しさだけでなく、食を通したコミュニケーションとは何かを学ぶ機会となりました。

Arroz al horno tradicional

Arroz al horno tradicional(アロス・アル・オルノ・トラディショナル)

そのほか、バレンシアでしか食べられないArroz al Horno(アロス・アル・オルノ/米のオーブン焼)や、All i pebre(アリ・ぺブレ/鰻の煮込)などの郷土料理もあり、クラシックとモダン両方の料理の魅力を余すことなく伝え提供していました。

バレンシアワイン

そしてお料理に欠かせないワインも生産者自らの手で振るまわれ、ワイン関係者の関心を集めていました。バレンシア州のワインは、D.O.バレンシア、D.O.ウティエル・レケーナ、D.O.アリカンテの3つの生産地域が、スペインワインの原産地呼称制度に認定されています。品種では、黒ぶどう品種のボバル(ウティエル・レケーナの在来品種)、モナストレル、テンプラニーリョ、白ぶどう品種のモスカテル、アイレン、ヴェルディル(バレンシアの一部でのみ作られている)、タルダナなどが栽培されています。また、バレンシア州で生産が認められているカバも提供されました。

一夜限りのバレンシアナイトは、ライブ感溢れるスタートから数々の美食とワインへと続き、ゲストは凝縮したバレンシアの魅力に酔いしれました。 郷土色を守りながら洗練されていくバレンシア州の美食、これからも注目していきたいと思います。

「バレンシア州ガストロノミー・テイスティング・イベント」

開催日:2024年3月5日

主催 :IVACE+I(バレンシア州政府商業支援室)

事務局:ニューワールドトレーディング(在日オフィス)

会場 :日本食品総合研究所

<「日本食品総合研究所」は、食の新たな文化を生み出す場として2023年10月にオープン。ラボラトリー&ファクトリー、テストキッチン、グローサリー、カフェ&ワインバーの4つのスペースで構成され、複合的に使えるスペース。「料理人と国内外の企業・地域社会をつなぐハブとなり、食の研究・試作のプラットフォームをつくる」というコンセプトが最大限に生かされたイベントとなりました。>

(料理名や調理法は公開されなかったため筆者が試食した範囲で記述しています事をご容赦ください。間違っている点はご教示いただければ幸いです)

「スペインワインと食」に関する情報を、日本とスペインから、イベントの告知も含めて発信してまいります。最新情報をいち早く知りたい方は、毎週金曜日に配信しているスペインワインと食協会のニュースレター「LOHASPAIN」をご活用いただけたら幸いです。無料購読はこちらから

【文】協会ライター 堀池麻樹 MAKI HORIIKE

東京出身。大学卒業後、広告プロダクションでデザイナーとして勤務。独立後デザイン会社設立を機にスペイン初渡航。シェリー酒・マンサニージャと出会い虜になり、帰国チケットを捨てそのままサンルーカル・デ・バラメダに滞在。以来毎年ボデガを訪問し惚れ込んだシェリー酒のPR活動を続けています。 現在はセレクトワインショップを運営のかたわら、スペインワインと食事情を各媒体に寄稿。 ワインショップSACRISTÍA代表。

WSET LEVEL 3(英国政府認定)資格保持。C.R.D.O.認定シェリー・アンバサダー。