~「ウルテリオール」の夕べ@アロセリア・ラ・パンサ~
Vol.3 ラ・マンチャ料理とワインペアリング
よく冷えたアルビージョ・レアルが心地よく喉を潤したところで、いよいよお料理とワインのペアリングディナーが始まりました!
テーブルにセットされたメニューカードを見ていたので、ペアリングにワクワクします。
まずは小林悟シェフから、お料理の説明がありました。シェフはいつも厨房の中にいて自らお料理の説明をすることはないので、何をどのように作っているのかお聞きできるのはとても貴重な機会です。

ワインを何度か試飲しながらビクトル・ガルシアさんとマリアージュをしたということで、お料理はラ・マンチャ地方の郷土料理をラ・パンサ風にアレンジされていました。
このイベントの凄いところは、シェフの話を聞けるだけでなく、お料理に合わせてワインがグラスに注がれるたびに解説をしてもらえること。
ワインスクールで講師も務めるビクトルさんのテイスティング・コメントを聞くことができるとは、なんという贅沢。

店内でサービスもこなしながら5回も登壇したビクトルさん。
ワインをグラスから香り、口に含んで味わい、ビクトルさんに倣って参加者もテイスティング。楽しいひとときです。
お料理の解説とワインのコメントは別々でしたが、ここからは6種類のペアリングを、おふたりのコメントとともに併せてご紹介します。

テーブルにセットされていたメニューカード
モルテルエロのモンタディート <Montadito de morteruelo>

『モルテルエロは、ラ・マンチャ地方の郷土料理で、数種類のお肉を使っているパテです。』
豚肉やうさぎ、ウズラに、スパイスとハーブを練りこんだパテを、カリッと焼いたパンに載せてモンタディート仕立てにしています。松の実がトッピングされて香ばしい。
☆ペアリングワイン:パルセラ7,9 アルビージョ・レアル
『アルビージョ・レアルは個性が強く、オイリーな品種なのですが、温度帯を変えることで様々な印象を与えるのが面白いです。5~8度位に冷やしたところから、ぬるい程度まで、いろいろな料理と合わせて使い分けができます。』
ウズラのエスカベチェとキノコのプランチャ <Codornices en escabeche con setas a la plancha>

『ラ・マンチャでよく食べるウズラをシェリービネガーで煮込みました。添えてあるのは、スペインのトランペット茸など数種類のキノコのプランチャです。』
焼いたウズラを、野菜・ビネガー・香辛料と一緒に煮込んだもの。シェリービネガーの爽やかな酸味で仕上げています。キノコの香りと食感がよいのでウズラと一緒に食べると味わいもよくシャキシャキと美味しいです。
☆ペアリングワイン:パルセラ6 ガルナッチャ
『スペインのガルナッチャ品種で作ったものはもったりとしたものが多いけれど、このワインはエレガントなワインになっています。エレガント系のガルナッチャでも青く硬いだけでなく、これは甘やかさがあるので、料理に合わせやすいワインです。』
ウズラのエスカベチェと一緒にいただくと、ビネガーの爽やかな酸が、ガルナッチャの甘さをひきたてていました。
ボンバ・トレダナ「トレドの爆弾」 <Bomba toledana de nosotros>

『中身は豚足、牛スネ肉、豚耳、野菜、ウリテリオールの赤ワインなどを一緒に煮込んで細かくしてマッシュポテトに包んでパン粉をつけて揚げた料理です。 一般的には豚挽き肉だけのレシピが多いのですがラ・マンチャでよく使う豚足や豚耳を使い牛スネ、赤ワインなど使用してレストランの一皿に仕上げました。ウルテリオールの赤ワインを入れているのがポイントです。』
爆弾という名前にぴったりの大きなコロッケのようなお料理ですが、牛スネ肉に豚耳や豚足の食感がコリコリとして幾重にも楽しめる一品。ウルテリオールのワインを加えて、優しく寄り添うマリアージュとなっていました。
☆ペアリングワイン:パルセラ17 グラシアーノ
『グラシアーノは普通は補助品種として使われるぶどうで、単一のワインは珍しいです。黒果実の香り。グラシアーノ特有の鉄っぽさやインクっぽさを感じるけれど、ハーブの香りが補ってバランスが取れています。この料理(ボンバ・トレダナ)のトマトのソースによく合います。キメの細かいタンニンは余韻があり長く楽しめます。』
“El Bohío”風 コシード、ロパ・ビエハ <Cocido de “El Bohío” y ropa vieja>

『ロパ・ビエハは牛肉を煮込んでコシードにし、スープを取ったあと肉のことで、スペイン語で「古い服」の意味です。今日はスープと肉を別々にお出しして、お肉はさらに細かくして味を整えて再度整形して焼きました。』
ロパ・ビエハといえばキューバの家庭料理。(元はカナリアからキューバに伝わったとの説もあります) 牛の脛肉を煮込んでスープを取った後、ポロポロになったお肉がボロ服のようなことからこの名前がついています。通常は出汁を取ったお肉の二次利用でさらにトマトやスパイスで煮込んだお料理。私は昔ハバナ滞在時代によく食べていたので懐かしいお料理です。「ロパ・ビエハ」といいながら、牛肉を食べられることが少ないキューバでは贅沢な食事でした!
小林シェフのEl Bohío”風コシード、「ロパ・ビエハ」は、さらに手をかけて、ほぐした肉を味付け直し小さなロール状にまとめて焼いてありました、見た目も洗練されています。

☆ペアリングワイン:・パルセラ10 ティント・ベラスコ
『ティント・ベラスコはとても複雑味のあるワイン。酸もタンニンも強いのですが、それが上手く融合しています。ビターで黒果実の味わいがあり、パワフルなので、家庭では肉料理に合わせると相性が良いと思います。』
ラマンチャの羊の煮込みのメロッソ <Arroz con caldereta de cordero manchega>

『最後にお米料理です。カルデレタという料理で、地方によっては牛肉や豚肉を使ったりしますが、ラ・マンチャのカルデレタの特徴としては、羊とビールを使用してつくる煮込みです。それにお米を入れてメロッソにしました。』
肉と野菜をシチューのように煮込んたお料理をカルデレータといい、そこにお米が入ってメロッソ仕立てになっています。よく煮込まれた大きめ野菜がたくさん入っていて柔らかく優しい味わい。羊はしっかりボリュームがあります。
☆ペアリングワイン:パルセラ4 マスエロ
『マスエロは補助品種として使われるぶどうです。スモーキーで、スパイス香があります‥リコリス・クローブなど。黒果実の凝縮した香り、カカオ、チェリー、ブラックベリーなど感じます。やや重くなりがちなのを酸が助けているので、バランスがうまく取れています。
うちはアロセリアでお米料理店ですが、お米の料理というのは噛む回数が少ないのであまり重たい赤ワインは合わせるのが難しいのです。それで今日のお米料理は羊のメロッソにしてみました。羊肉が噛み応えあるので、しっかりめの赤ワインにも合うようになっています。』
「ビスコチョ・ボラーチョ」卵黄のカラメリサーダ ヤギのミルクのアイスクリーム添え <Bizcocho borracho con yema quemada y helado de cabra>

『ビスコッチョにラ・マンチャのアニス酒のシロップで漬けました。そこに卵黄のソースを塗って香ばしく焼いてカラメリサーダにしました。ラ・マンチャは羊や山羊の家畜のイメージがあったので山羊のミルクのアイスクリームをそえました。ご一緒にどうぞ。』
ラ・パンサの定番デザートのビスコチョ・ボラーチョをラ・マンチャ仕立てにしてあります。山羊のなめらかなアイスクリームととても合います。
☆ペアリングワイン:ヴェルム・アイレン・デ・イエルバス
デザートのお供は、ヴェルムのアグアルディエンテが特別提供されました。
色味はうっすらとした緑色で、干草の色だそうです。30種類以上のハーブを使い、樽熟成3ヶ月、テロワールを感じることができるような繊細な蒸留酒です。

ペアリングは味そのものの相性だけでなく、口に入れた時の香り、食感や広がる味わい、余韻、さまざまな要素を汲んでいるのですね。
ラ・パンサのお料理とウルテリオールのワインの融合、言葉で表現できないくらい素晴らしかったです。
お食事の後はさらにお楽しみ。エリアスが「本日のベストドレッサー賞」を選び、賞品授与がされ、私たち参加者全員にもプレゼントがありました!

最後にみんなで記念撮影。

本当に美味しく楽しい贅沢な一夜でした。
まさに ¡La panza llena corazón contento! ごちそうさまでした。

最後までお読みいただきありがとうございました。
協会ライター 堀池麻樹 MAKI HORIIKE
東京出身。大学卒業後、広告プロダクションでデザイナーとして勤務。独立後デザイン会社設立を機にスペイン初渡航。シェリー酒と出会い虜になり、帰国チケットを捨てそのままサンルーカル・デ・バラメダに滞在。以来毎年ボデガを訪問し惚れ込んだシェリー酒のPR活動を続けています。 現在はワインのセレクトショップを運営のかたわら、スペインワインと食事情を各媒体に寄稿。
ワインショップSACRISTÍA代表。WSET LEVEL 3(英国政府認定)資格保持。C.R.D.O.認定シェリー・アンバサダー。
