10月28日「ラ・マンチャ ワイン」と「ラ・マンチャ 料理」をテーマに、「第7回 スペインワインと食大学」が開催されました。
~「ウルテリオール」の夕べ@アロセリア・ラ・パンサ~
ワインは若手醸造家エリアス・ロペス・モンテロ氏が手がける「ウルテリオール」。
料理は銀座「アロセリア・ラ・パンサ」の小林悟シェフによる「ラ・マンチャ郷土料理」。
さらにワインと料理のペアリングを、「ラ・パンサ」のオーナーソムリエであるビクトル・ガルシア氏が解説するという贅沢な内容です。
とても充実して盛りだくさんのイベントだったので、ブログを数回に分けてお伝えしたいと思います。
Vol.1は「ウルテリオールの世界」です。

エリアスは「Decanter誌(2018年2月)」で、これからワイン界でトレンドを築いていくスペインの若き10人の醸造家、の1人に選ばれ、今まさに世界から注目を浴びている醸造家です。
「ウルテリオール」は彼の新プロジェクト。
今回のイベントに先駆けて、エリアスの来日にともない7月に行われた発表会でウルテリオールワインを試飲する機会がありました。その時、はじめて飲んだのにとても親しみやすいワインだと感じた私は、きっと日本で受け入れられ易いだろう、というなにか確信のようなものが。
では「なぜウルテリオールなのか?」
小さな「?」マークを胸にイベントに参加したこの日、その答えがありました。

それは、とてもシンプルなことでした。
エリアスが郷土のカスティーリャ・ラ・マンチャとワインへの思いを語る時に、溢れ出る土地と種への敬愛。
それがそのままワインに表現されて、ウルテリオールは「わかりやすいワイン」になっているからです。
ワインは世界に星の数ほどあるので、その中から自分の気に入るワインを見つけることは簡単なことではありませんよね。
でも難しいワインの知識がなくても、自分の好みを選び、美味しく飲むことができる。
「ウルテリオール」はそういうワインなのです。

ULTERIOR(ウルテリオール)とは、スペイン語で「未来」、ローマ語で「テリトリーの発見」を意味し、名前の通り、伝統を継承しつつ、気候変動に対応し”未来“のブドウ栽培と革新を行い、カスティーリャ・ラ・マンチャ土着絶滅危惧種の復活を目指す深い郷土愛から生まれたそうです。
ウルテリオールはコンセプトが明確です。
◇単一品種であること
◇パルセラという区画により、品種にあう土壌を選んで栽培していること
◇オーガニック農法により、土地の特徴をストレートに表現すること
◇伝統製法を継承していること
4項目について、エリアスの話をもう少し紹介しますね。

〜単一品種であること
今回日本に輸入されたワインは、
・パルセラ4 マスエロ
・パルセラ6 ガルナッチャ
・パルセラ7,9 アルビージョ・レアル
・パルセラ10 ティント・ベラスコ
・パルセラ17 グラシアーノ
の5種類です。
グラシアーノとマスエロは、一般的にブレンドの補助品種として使われることが多く、単一品種でワインが造られることは稀なのですが、ウルテリオールでは伝統に回帰してこれらの土着品種を単一で使用してワインにしています。
〜パルセラという区画により、品種にあう土壌を選んでいること
農園「フィンカ・ロメラル」で栽培されているぶどうは現在15種類。すべて個性の違うぶどう達です。
エリアスは「フィンカ・ロメラル」の土地をさらに土壌ごとに細分化して、それぞれ相性の良いぶどうを栽培しています。そのことにより、ぶどう本来の個性が発揮されるのです。

〜オーガニック農法により、土地の特徴をストレートに表現すること
ラ・マンチャにはメセタと呼ばれる乾燥した大地が広がり、風が強く日差しの強い気候風土です。元々大きな池だった土地が隆起してできた土壌は石灰岩を含み、日照時間が長いのですが、これらの要因がオーガニック栽培にとても適しているといいます。
〜伝統製法を継承していること
乾燥して樹木が育ちにくかったラ・マンチャの地で、伝統的に使われていたのはアンフォラ(tinajas de barro)という素焼きの大甕。ウルテリオールはこの素焼き甕で熟成をしています。
木樽を使用すると香りがワインに移り、時として品種本来の特徴を隠してしまいますが、アンフォラには微細な穴が空いているため熟成を促す効果があり、ぶどうの特徴をそのままワインに閉じ込めることができるそうです。

こうしてできたワインがボトリングされます。
中身のワインだけでなく外見的にも工夫が施され、ボトルのエチケット(ラベル)を見れば、それがどの区画のどの品種か一目でわかるようになっています。
PARCELA No4
MAZUELO
のように。
すべての結果、飲み手がわかりやすく選ぶ人にも優しいワインになっています。

農産物が育てられる土地・土壌の特徴を指す「テロワール」と呼ぶ言葉がありますが、ワインにはテロワールが反映し、純粋なワインであればあるほど、テロワールの表現がワインの味に大きく関与してきます。
日本酒という「水」「気候」「風土」が生み出す酒文化に慣れ親しみ、「テロワールの表現」に対して優れた感覚を持つ日本人にとって、ウルテリオールのワインに親しみを感じるのはごく自然のことではないでしょうか。
Vol.2では「ラ・パンサ」と、ウルテリオールとラ・マンチャ 料理のペアリングについて触れたいと思います。
協会ライター 堀池麻樹 MAKI HORIIKE
東京出身。大学卒業後、広告プロダクションでデザイナーとして勤務。独立後デザイン会社設立を機にスペイン初渡航。シェリー酒と出会い虜になり、帰国チケットを捨てそのままサンルーカル・デ・バラメダに滞在。以来毎年ボデガを訪問し惚れ込んだシェリー酒のPR活動を続けています。 現在はワインのセレクトショップを運営のかたわら、スペインワインと食事情を各媒体に寄稿。
ワインショップSACRISTÍA代表。WSET LEVEL 3(英国政府認定)資格保持。C.R.D.O.認定シェリー・アンバサダー。
