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vol.3 海の恵み溢れるガリシアのワインと食の魅力 (スペインワインブログ EL Vino Nos Habla 佐武祐子氏)

海の恵み溢れるガリシアのワインと食の魅力
(フーディーズTV:「スペイン・オン・ザ・ロード」インタビュー:2011年1月)

今日のテーマは「ガリシア」。日本人にとってスペインといえば、白い街や、アルハンブラ宮殿、フラメンコなど、南部のアンダルシア地方のイメージが強いですが、スペイン北西に位置するガリシア地方は、そんなイメージとは対照的に、雨が多く緑豊かで、海の恵みに溢れています。

今日は、スペイン在住10年、スペインワインを日本に啓蒙するため、様々な活動をされている佐武祐子さんに、ガリシアのワインの魅力についてインタビューさせていただきます。

【原田】

美味しいワインを求めて、スペイン中を飛び回っている佐武さんですが、まずは、ガリシア地方の印象を教えてください。また、それはワイン作りにどんな影響を与えていると思いますか?

【佐武】

イベリア半島北西部、ポルトガルのすぐ上、大西洋沿いに位置するガリシア地方は、私にとって日本への郷愁の念が湧く土地です。ガリシアと日本にはいくつか共通点があるからだと思います。
第一に、雨が多く、緑が豊か、山と海のある風景。日本ととても似ています。これはワイン造りにも表れていて、特に海沿いの湿度の高いリアス・バイシャスという産地ではブドウ樹が棚作りで栽培されており、日本の雨の多い産地のブドウ樹の仕立て方と共通していて、気候・環境の類似性を感じさせます。

ヘラルド・メンデス氏樹齢300年近くのアルバリーニョ樹と!

第二に小農制があると思います。形を変えながらもガリシア地方も日本も小農制を続けてきた歴史があります。棚作りで細分化された小さな区画の畑が多い風景を山梨で見た時、ガリシアをすぐ思い出しました。小農制もあり、目立った産業もないガリシアは昔貧しい土地で、棚作りでブドウを栽培しながら、その下の地面で野菜を栽培するなど、生産効率を上げるために棚作りは有効だったそうです。20年ほど前から品質重視への認識が高まり、アルバリーニョを始めとする様々な固有品種で高品質ワインが造られるようになりました。

【原田】

ガリシアといえば「海のワイン」と呼ばれるアルバリーニョが有名ですが、日本ではまだ知名度が低いのが現状です。アルバリーニョの最新情報について教えていただけますか?

【佐武】

1980年に認定されたDOリアス・バイシャスでは、固有品種のアルバリーニョ種に力を入れ、高品質ワイン造りを押し進めてきました。アルバリーニョ種は、雨が多く穏やかな気候に適し、上品で果実や花などの複雑な香りに、口に含むとしっかりした酸に支えられたフレッシュ感がありながらもしっかりしたボディで、バランスの取れたワインになります。また、沿岸部である土壌からブドウ樹のヨウ素摂取量が高く、それによる塩っぽさ、ミネラリーさも感じるワインも多いです。

リアス・バイシャスでは約4000万リットルのワインが造られます。180以上の生産者がいますが、大量生産の5社でその4割以上が占められています。そうした大規模生産者の陰で、小規模で素晴らしいワインを造る造り手が存在することはまだあまりり知られていません。そうゆう状況があるからか、日本のワインスクールでは今でもアルバリーニョのワインを「シャバシャバした(水っぽい)軽い若飲み用のワイン」という誤った定義をするところもあるそうです。

過去20年の飛躍的な品質向上により、最近では前述のような素晴らしいバランスの長熟に耐えるワインが造られるようになりました。造り手の中には樽熟成しないワインでも、澱と共にステンレスタンクで1年寝かせてから市場に出す人もいます。樹齢300年近くのアルバリーニョから造るヘラルド・メンデスのセパス・ベーリャスがその一例です。

ヘラルド・メンデスのセパス・ベーリャス

【原田】

アルバリーニョに合うお勧めのガリシア料理はなんですか?

【佐武】

やはり海の幸ですね。ガリシアでは新鮮な海の幸を重視するため、蒸し、焼きなどシンプルな料理法で楽しみます。例えば、セントージョ(毛ガニ)、ネコラ(カニ)、シガラ(アカザエビ)の海水茹で、アルメハス・ア・ラ・マリネラ(アサリの漁師風 : 玉ねぎ、パセリ、ガーリックと共にアサリを炒めた一品)、サンブリーニャ(ホタテに似た貝)の鉄板焼き、カレイの鉄板焼きなどです。土壌から摂取するヨウ素を多く含むアルバリーニョは、塩っぽさ、海の香りがするものもあり、前述の海の幸とぴったり合います。しっかりとしたストラクチャーとミネラリーさもあるアルバリーニョは、軽くスモークしたサーモンにオリーブオイルやディルをかけたものやメルルーサ(タラの一種)のマッシュルームとエビ煮込み、また、お肉料理にも合わせやすいワインです。

サンブリーニャの鉄板焼き

 

セントージョ

【原田】

ガリシア地方といえば、白ワインのイメージが強いですが、赤ワインの品質はいかがですか?

【佐武】

ガリシア地方のワインといえば、リアス・バイシャスのアルバリーニョが筆頭に挙げられますが、ガリシアに存在する多彩な固有品種には黒ブドウ品種も多く、地元の人は赤ワインも良く飲みます。そして、ガリシア地方には、リアス・バイシャスの他に、リベイロ、ビエルソ、リベイラ・サクラ、バルデオラス、と計5つの産地があり、赤ワインでは、ビエルソやリベイラ・サクラが注目されています。主要品種はメンシアで、カベルネ・フランとピノ・ノワールの特徴を合わせ持つ品種とも言われます。その他、カイーニョ、ローレイロ、バスタルドなどの固有品種でも素晴らしいワインが造られ始めています。メンシアのクオリティを一気に押し上げた先駆者アルバロ・パラシオス、そしてガリシアの様々な産地で固有品種を使い素晴らしいワインを造る天才醸造家ラウル・ぺレスは、ガリシアの赤ワインの今を語る上で欠かせない存在です。

大注目の天才醸造家ラウル・ぺレス氏

【原田】

そんな赤ワインに合うガリシア料理があったら教えてください。

【佐武】

ガリシアは海だけではなく、山の幸も豊富です。きのこ、肉、野菜など、様々な郷土料理があります。代表的なのは仔羊肉のオーブン焼きや、オ・カルデイロ(牛肉とジャガイモをラードと水で煮込み、厚くスライスしたジャガイモの上に肉を乗せ、オリーブオイルとパプリカ、塩をかけた一品、タコのガルシア風の肉バージョンです。)、カポン・レジェノ(玉ねぎ、にんにく、りんごの砂糖煮、プラムのポートワイン煮と肉、生ハムを煮込んだソースを鶏肉の中に詰めて焼く鶏丸焼き)など、上品なフレッシュ感、エレガンス、素晴らしいストラクチャーを持つガリシアの赤ワインによく合います。全体的に重い赤ではないので、マグロなどの青魚料理とも楽しめます。

【原田】

最後に、スペインワインを盛り上げるために、様々な活動をされている佐武さんですが、ここまで佐武さんを惹きつける「スペインワイン」の魅力を教えてください。

【佐武】

一言、「熱い!」です。ここ10年ほど、スペインワイン業界は火山が噴火し続けているような活発な成長期にあります。もはや一昔前のように、代表的産地はリオハ、リベラ・デル・ドゥエロ、プリオラート、などと限定することはできません。ほとんど知られていない小さな産地も含め、スペイン全土で改革が起きています。海外で学び、経験を積んだ若い醸造家、スペインワインに魅了された外国人ワインメーカーなどが新しい風を吹き込み、素晴らしいワインを造る伝統的な環境と共に、スペイン中の様々な地域で本当にクオリティの高い、個性あるワインが造られ、その絶え間ない進化、造り手たちの情熱は消費者である私達にまで届き、わくわくさせてくれます。ブランドイメージを崩すことを恐れ、統制委員会の規制に準じていた以前とは違い、DO、DOCの枠を離れ、自由な発想で理想のワイン造りを目指す生産者がどんどん現れ、日常消費用のワインカテゴリー(ビノ・デ・ティエラ、ビノ・デ・メサ)で、素晴らしいワインに出会うこともしばしばです。

また、規制の面でも改革が進んでいます。スペインでは、原産地統制制度がフランスよりも2年早い1933年に規定されたにも関わらず、細部の規制は進んでいませんでした。昨年、プリオラートで、フランスの村AOCに当たる「ビノ・デ・ビラ」が正式に呼称として認定され(カタルーニャで)、プリオラートだけでなく、プリオラートの○○村のワイン、と表示ができるようになりました。本当に大きな一歩です。また、実はスペインもイタリアのように無数の固有品種が存在します。その固有品種を使って個性豊かな高品質ワインがどんどん産まれています。ワイン伝統国でありながら、ニューワールドのような新しさも持ち合わせる国だと言えます。躍進著しく、私たちを終始驚かせてくれるスペインワイン、それを、他の伝統国のワインと比べてとてもリーズナブルな価格で楽しめる、それがスペインワインの魅力です。

【原田】

すごいですね!ガリシアのワインをはじめ、スペインワインの躍進、これからますます目がはなせません。海の幸豊富なガリシア料理は、日本人の口にとても合いますね。ガリシア料理やワインが堪能できるレストランやバルが、日本でももっと増えることを願ってやみません。佐武さん、現地に根付いた貴重な旬の情報をありがとうございました。これからもスペインワインレポート、楽しみにしています。

[佐武祐子氏 プロフィール]
スペインワインを日本に啓蒙するお手伝い、ワインに関する通訳・翻訳、ワインツーリズムの企画・実施。
2008年DOカタルーニャ ブログコンクール特別賞受賞、「料理王国」誌のワールド・レポートでは、バルセロナからのレポートを執筆している。JSA (日本ソムリエ協会) 認定 ワインエキスパート。

[佐武祐子 スペインワインブログ EL Vino Nos Habla]
http://blog.vivaspain.es/index.php
現地発信の造り手の顔が見えるワイン情報満載。

スペインワインと食協会 インタビュアー 原田郁美

山口県出身。広告代理店でデザイナーとして勤務後、渡西。3年間のバルセロナ生活でスペインワインと食の魅力に取り憑かれる。バルセロナ、東京でWebマーケティング会社勤務後「日本とスペインをつなぐ架け橋」を目指し独立、スペインワイン生産者の日本市場進出サポートを行う。2011年「スペインワインと食協会」設立。2012年に再び渡西。スペイン産ワインと食品に特化した、輸出サポート・プロモーション全般、デザイン、執筆を行う。WSET ® Level 3(英国政府認定)

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