みなさん、はじめまして。
スペインのおいしいもの、特に大好きなお酒に関してのあれこれを綴っていこうというこのブログ、記念すべき1回目は、その爽やかさが幕開けにふさわしいチャコリの話から始めたいと思います。
チャコリといえば、バスク地方のみで造られる伝統的な白ワイン。微発泡で、フレッシュな酸があって、高いところから平たいチャコリグラスに注いで飲むもの。…と、私も単純に決めつけてました。
いや、白状すると、あのきゅーっとこめかみを直撃する酸と、アルコールの軽さが単調に思えて、どうも好きになれなかったというのが正直なところ。
しかーし。
つい最近、そんな思い込みを覆される出会いがありました。
9月16日、東京のホテルニューオータニで行われたスペイングルメフェア。
年に2回、スペインワインと食品を集めて開催される商談会に、今年はチャコリの5つのボデガで組織するプロモーション協会「KANTAUREX」が初出展。ブースに並ぶのは、各社自慢のチャコリ合わせて15銘柄!

これだけのチャコリが一度に揃う図は、日本ではなかなかお目にかかれません(ボトルより後ろのイケメンズにピントが合っているのはご愛嬌ということで…)。ましてや、テイスティングとなると、めったにないチャンス!
アドレナリン上がります。
「KANTAUREX」メンバーのボデガはHIRUZTA、BIZKAIBARNE、TALAI BERRI、GORKA IZAGIRRE、ASTOBIZA。チャコリの3つのDO(原産地呼称)「チャコリ・デ・ゲタリア」「チャコリ・デ・ビスカイア」「チャコリ・デ・アラバ」の生産者5社の共同輸出部門として、2013年に設立されました。
ギプスコア県のボデガ、TARAI BERRIのチャコリ。チャコリの産地として、たぶん一番メジャーなのはサンセバスティアンに近い漁師町ゲタリアですが、ボデガはゲタリアから4kmほど手前のサラウスにあります。一般的にイメージしやすい微発泡、シュッとしてスッキリ系のチャコリ像に近いキャラクター。

こちらは、ビスカイア県ビルバオ近くの内陸部にあるボデガBIZKAIBARNE社の「OTXANDURI」。ゲタリアのチャコリほどの発泡感がなく、酸も穏やか。全体的に内陸側のチャコリは発泡がないか、あってもごく控えめで、味わいに複雑さが加わる印象。個人的には、こちらのほうが好みかも。和食に合わせるなら、こっちだと思う。軽やかさとボディのバランスがとれていて、とても感じのよい味わいです。

同じくビルバオにほど近いGORKA IZAGIRRE社は家族経営の醸造所。ミシュランの三ツ星レストラン「Azurmendi」も、ここんちの経営だそうです。今回は若社長のBertolさんがプロモーションに同行。総面積40haの自社ブドウ畑は14区画に分けられ、それぞれの土壌やミクロクリマを考慮しながらオンダラビ・スリ、オンダラビ・セラティアの2品種のみを栽培。低温でのマセラシオン、樽熟成など、チャコリとしては例外的に手のかかる手法を積極的に取り入れて、より複雑な味わいとボディを表現しているのだそう。
本日のインパクト大賞は、これ! チャコリではかなりレアな樽熟バージョンの「42 by Eneko Atxa」。上のボデガGORKA IZAGIRREの野心作です。オンダリビ・セラティアのモノバラエタル。「42」はフランスのオーク樽でねかせた熟成日数とのこと。発泡なし。ボディしっかりめ。自然派ワインによく感じる和風だしのような風味もうっすら。いわゆるフレッシュなチャコリをイメージして飲むと、いや、チャコリと知らずに飲んでも、「えっ!?」と驚くこと必至の個性的な味わい。でも、不思議に後を引く滋味があります。
SEÑORIO DE ASTOBIZA社は5社の中で唯一「チャコリ・デ・アラバ」のDO。ボデガ代表のJon Zubeldiaさんが手にしているのは、輸出用のスペシャルバージョンという「GORABIE 2013」。青リンゴのほんのり甘やかさ、ハーブのスパイシーな香りが感じられるチャコリで、若々しい印象ではありますが、これも発泡感はほとんどありません。
上位クラスの「MALKOA」になると、樹齢の長いブドウを使い、マセラシオンや熟成にもより時間をかけるためか、味わいに丸みと厚みが出てきて、ぐっとエレガントな印象に。このボデガのチャコリは、クラスに関係なく、どれを飲んでも実にけれん味のない素直な味わい。すーっと体にしみわたるような独特の柔らかさが印象的でした。Jonさんのキャラクターにもかぶるような。「ワインは人なり」と言うけれど、ホントにそうですね。
生産者の方が持ってきてくださったバスクのチーズ、イディアサバルと合わせてみて2度ビックリ。白ワインと羊乳のチーズが、こんなにしっくり合うとは。土地の食べ物とは、よくできたものであります。
いやいや、思った以上に面白かったチャコリワールド。フレッシュな若飲みワインばかりではないと舌で確認できたことが、今回の大きな収穫でした。
ガス感なし、コクありのチャコリはニューウェーブなのかと思いきや、そもそもビスカイヤやアラバでは、こちらがスタンダードなのだという発見も。
帰りぎわ、これら山バスク側の生産者の皆さんに「今日いただいたのも、こうやって(片手を上に高く上げて)チャコリグラスにつぐんですか?」と質問。
速攻で「NO NO NO!!!」と返されました。
【文】協会ライター 堀越典子
フリーライター。主に雑誌媒体を中心に食とお酒に関する記事を寄稿。得意なテーマは日本酒、スペインのバルフードを含む酒肴全般。
スペインワインの偏愛者でもある。1990年代から取材&プライベート旅行でたびたび渡西。2005年のカミーノ・デ・サンティアゴの初歩き以来、巡礼の道行がライフワークに。
スペインに向けて日本酒の魅力を発信するべく、スペイン語の日本酒情報サイト「EL SAKE BLA BLA」も主宰している。




