グルマンなワイン体験

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第4回スペインワインと食大学レポート:「ヴェルム」テイスティングセミナー

 

どんなワインが好きですか?

野暮な質問と知りつつ、つい一緒に飲んでいる相手に聞いてしまうことがある。

うーんと考えた後に、返ってくる答えはいろいろだ。

ずばり、ブルゴーニュ。白も赤もエレガントなタイプが多いから。

和食にも合わせやすいフレッシュ&フルーティーの白。

カラダにやさしい自然派。

「生産者の顔と、その土地の風景が立ち上がってくるワイン」なんて詩人のようなことを言う人もいる。

 

でも、いちばん印象的で、今も頭に残っているのは、けっこうな年季のワインラヴァーから聞いた一言だ。

「クラスを問わず、飲んでいると、お腹が空いてきて、気がつくと空になっている。そんなワインなら、間違いない」

 

 

スペインワインと食大学の特別講座として行われた「Verum」テイスティングセミナー。会場は輸入元のアルカン本社。レストラン関係者、プレスを中心とする40名が参加した。

スペインワインと食大学の特別講座として行われた「Verum」テイスティングセミナー。会場は輸入元のアルカン本社。レストラン関係者、プレスを中心とする40名が参加した。

 

そのフレーズを久々に思い出したのは、さる6月27日、第4回「スペインワインと食大学」(スペインワインと食協会主催)の特別講義として開催されたラ・マンチャのワイン「ヴェルム」のテイスティングセミナー席上のこと。

来日中の醸造家エリアス・ロペス・モンテロ氏、気鋭のソムリエ・石田博さんを講師に迎え、ワインについて学ぼうという贅沢な“授業”である。

 

「Verum」のオーナー醸造家、エリアス・ロペス・モンテロ氏が登壇。生家は歴史ある蒸留酒製造会社を経営。リベラ・デル・デュエロの銘醸ボデガ「アアルト」、南アフリカの「ディステル」社などで醸造技術を学んだ後、新プロジェクトとして「Verum」を創設した。大変な親日家としても知られる。

「Verum」のオーナー醸造家、エリアス・ロペス・モンテロ氏が登壇。生家は歴史ある蒸留酒製造会社を経営。リベラ・デル・デュエロの銘醸ボデガ「アアルト」、南アフリカの「ディステル」社などで醸造技術を学んだ後、新プロジェクトとして「Verum」を創設した。大変な親日家としても知られる。

 

ラ・マンチャ地方のトメジョーソにある家族経営のボデガ「Verum」の設立は2005年。かつては大量生産のバルクワイン中心、ボトルワインもいまひとつ垢抜けないイメージがあったDOラ・マンチャにあって、よりテロワールに注力し、高品質のワイン醸造を目指す若手醸造家が台頭してきた時期と重なる。

ボデガの哲学は、ブランド名に集約されている。ラテン語で“真実”を意味する「Verum」。それは、造り手であるファミリー、土壌、ひいてはワインそのものに対して真実でありたいという決意のあらわれであり、有機栽培主体のブドウ造りにもその思想が反映されている。

この日のテイスティング用には、いくつかあるラインナップから、ヴェルムのフラッグシップともいえる白・赤各2種類のワインを試飲した。

 

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左からVERUM TERRA AIREN DE PIE FRANCO 2014、VERUM BLANCO 2014、VERUM ROBLE 2012、VERUM TINTO 2011

 

トップバッターは、ラ・マンチャの伝統的な白ブドウ品種、アイレン100%の「ヴェルム・テラ・アイレン・デ・ピエ・フランコ2014」。

石灰岩に小石混じりのミネラル豊かな土壌で栽培された、樹齢66年のアイレンで造られるためか、「フルーティーなアロマより、土壌由来のミネラリーな香りが前面に出ている」と醸造家のエリアス。

石田ソムリエが、この香りを「甲州のトーン」と表現したのが印象的だった。「洋梨、グレープフルーツ、丁子、アニスのニュアンスも。空気に触れるにつれ、ラベンダーの種、ポプリの香りも出てくる。香りのキメが全体に細かい」と。

灼熱のラ・マンチャで造られたワインとは思えない繊細さが感じられるタッチは、まさに甲州的。きれいで、外連味のない味わい。和風出汁の旨味を思わせる風味もほ~んのり。

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2つ目の白には、ソーヴィニョン・ブラン主体、ゲビュルツトラミネールも20%使われた「ヴェルム・ブランコ2014」

石田ソムリエのコメントのメモより。

「ソーヴィニョン・ブランに特徴的な青りんご、洋梨のフレッシュ感、ゲヴュルツらしいライラック、ジャスミンのフローラル感」

「余韻にマスカットやメロンも。キャラクターが強い2つの香りがうまくバランスされている。ドライで、酸を中心として縦に伸びるタイプの味わい」

1本目より香りの華やかさ、ボリューム感はあるものの、全体の印象は、やっぱりクリーンで控えめ。しつこいけれど、これ、ほんとにラ・マンチャだったよね??と、ラベルを確かめてしまいそう。舌の付け根を収斂させる感じのシャープな酸ではなく、もっと練れていて、でも伸びやかで心地よい酸がキラキラ。これが“酸を中心に縦に伸びる”という表現になるのか! いやもう、ほんとに勉強になります。

 

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次はティントの「ヴェルム・ロブレ2012」に。

ヴェルムの中で一番生産量の多いライン。ここでも、石田ソムリエの印象深いコメントが続々。

「鮮やかでグラデーションのある色合い。過剰さのない成熟度に造っていること、その健全さがわかるグラデーション」

「ラ・マンチャにイメージされがちなジャミーな香りがない。過熟ではなく、適度に熟して歯ごたえを残したフルーツのアロマ」

「フローラル。快適で心地よく、チャーミング」

 

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そして「ヴェルム・ティント2011」。

「対照的な土っぽいラスティックな香り。野ばら、野いちご、後からスパイス、バニラ、ロースト香、カカオが交じる香りの複雑さ」

「若々しいロブレに比べてより凝縮感が高く、引き締まった筋肉質のストラクチャー」

「肉厚。緻密で細やかなタンニン。噛んで味わいたくなるグルマンな個性」

 

さらさらさら~っと流れるようなリズムで、的確に繰り出される石田ソムリエのコメントには、ただただ、ため息が出るばかり。とりわけ鮮明に記憶に残ったのが、「健全」「過剰さがない」「グルマン」という3つのキーフレーズだ。

 

講師の石田博ソムリエ。国内の数々のソムリエコンクールで優勝。世界最優秀ソムリエコンクール2000年大会では第3位に。今年4月のアルゼンチン大会でもセミファイナリストに選出されるなど、輝かしい受賞暦を誇る。

講師の石田博ソムリエ。国内の数々のソムリエコンクールで優勝。世界最優秀ソムリエコンクール2000年大会では第3位に。今年4月のアルゼンチン大会でもセミファイナリストに選出されるなど、輝かしい受賞暦を誇る。

 

実はテイスティングしている間、しきりに頭に浮かんだのが、例の“お腹が空くワイン”という言葉だった。

「Verum」はブランコもティントも、口にしていると、どんどん食欲中枢を刺激されるような“引き”のよさがある。食べたいものが、あれこれ浮かんできて、またグーッとお腹が鳴りそうになる。

「健全」で「過剰さのない」バランスに裏打ちされた、グルマン(おいしそう)なワイン。お腹が空いてこないわけがない。そして、自分が好きなのも、やっぱりそんなワインなんだと改めて思う。

 

 

協会ライター:堀越 典子(ほりこし・のりこ)

フリーライター。酒・食・旅をテーマに食の専門誌、一般誌、PR誌などに取材記事を寄稿。取材&休暇でスペインを訪れること20数回。ここ数年はサンティアゴ巡礼、日本酒をスペインに紹介する活動が新しいライフワークに。スペイン語による自身のブログEl Sake Bla Blaで日本酒情報を(細々と…汗)発信中。

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