サン・セバスティアンで日本酒を!(その2)

By 17 December, 2015EVENT REPORT, NEWS, SAKE
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サン・セバスティアンで日本酒を!(その2)

 

スペインのバルで日本酒イベントをすることは、ずいぶん前からの夢でした。

SAKEは、日本料理店で和食と飲む特別な飲みもの。そう思っている人が多いけれど、そうじゃないこと、知ってもらいたい。地元の人たちが普段から食べているもの、タパスとかピンチョスとか、とにかくローカルフードと一緒に飲んでこそ真価がわかってもらえるはず。願わくば、誰もが気ままにフラリと入れるオープンな場所で。1人でも多くの人に飲んでもらうために。

となれば、場所はレストランより、断然バルでしょ!となるわけで。

そこに、ふってわいたサン・セバスティアン映画祭がらみの日本酒ミッション。すわ絶好のチャンス、逃してはならじ!というわけで、初日に続くイベント第2弾は、市内のバルで「Pintxos meets  SAKE」のペアリングナイトを催すことに。

舞台は、メイン会場のクルサールがあるGros地区の老舗バル「Bergara」。サン・セバスティアンのピンチョス文化をつくった名門の一軒。カウンター上に満艦飾のピンチョスを並べるスタイルも、この店が発祥といわれます。

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色とりどりに咲き誇るピンチョスの眺めは、いつ見ても圧巻の一言。どれもこれもが美しく、外れなくおいしい。そして、何より温かく、目配りがきいていて、かつきびきびとしたサービスの心地よいこと!

新旧含めて無数のバルがひしめくサン・セバスティアンですが、ここほど上質なオーラで満たされている店をほかに知りません。観光客以上に地元住民の、それも口の超えた常連客が多く、いわゆる“客種”がいいのも、ここんちの特徴。いつか日本酒イベントをやるなら、絶対この場所で!と決めていました。

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日も暮れてきた19時、いよいよイベントのはじまり、はじまり。 店の軒先にあるテラスがSAKEのサービススペース。飲みたい人はここでチケットを買って、日本酒とピンチョそれぞれ1種類ずつを選んでペアリングを楽しんでね、日本酒が気に入ったら、おかわり1杯出血大サービスの1ユーロでOKよ!…の方式。

SAKEビギナーのために、蔵元やインポーターを含む日本酒のプロ8名がコンシェルジュとしてスタンバイ。試飲をしてもらいながら、好みの一杯を探り当てるためのアドバイスに当たります。

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この日、用意した日本酒は12種類。北は岩手から西の山口まで幅広いラインナップに加え、なんとノルウェイ産の日本酒も! 香り系、旨味系、ドライ系、泡やにごりなどの個性派の4タイプに分け、それぞれの特徴や料理との相性を紹介するリーフレットを用意。誤解されがちな日本酒についての知識もQ&Aにまとめて紹介しています。

たとえば、「日本酒はアルコールの強い蒸留酒じゃないんですよー」(強いお酒と思い込んでいる人が、ほんとうに多い)とか、「食事と一緒にゆっくり楽しんでくださいねー」(食後酒としてクイッとあおるもんだと思っている人、多数)とか。

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チケットは、東急ハンズで見つけたパーティー用のクロークチケット(笑)。同じ番号が2枚ついたチケットを1枚4ユーロで購入。日本酒と引き換えに半券を渡し、店の中へ。好きなピンチョスを1品選んだら、残りの半券を店の人に渡して受け取るシステムです。連番になっているから、購入者数もカウントできるスグレもの。

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最初はポツポツの入りだったのが...

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あれよあれよという間に増えてゆき、

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1時間後には大ごったがえし状態に。こ、ここは新橋ですか!?

いざスタートしてみると、チーム・コンシェルジュ大忙し。「ワインならどこそこのボデガのあれが好きなんだけど、どのSAKEが好みに近いかな?」「このSAKEはどのピンチョと合わせるのが最高だと思う? あなた、ちょっと一緒に来て選んでよ」「米が原料なのに、フルーツの香りがどうして出るのか説明して!」とまあ、とにかく質問の多いこと多いこと。

こちらの人にとって、会話をしながら選ぶプロセスこそが大事なのだなあと、つくづく。誰もかれもが真剣そのもの。1杯の酒であれ、妥協しません。そして、この真剣度は、自分のお財布を開いてチケットを買っているからこそ生まれるのだと思う。お金をいただくことは大事です。人はタダのものに敬意を払いませんからね。

日本酒とのペアリングで特に人気の高かったピンチョスを一部紹介すると…

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ピンチョスの古典“ヒルダ”(アンチョビ、青唐辛子のギンディージャ、オリーブの串刺し)の変形バージョン。発酵食品のアンチョビは、やはり日本酒とは直球ド真ん中の相性なり。


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魚介のクリームソースに雲丹、キノコを入れてオーブン焼きに。SAKEに合わないわけないでしょう、の一品。にごり酒とも抜群のペアリング。


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肉もいけます。仔牛の頬肉の赤ワイン煮込み。米の旨味がしっかりのった熟成感のある純米酒がおすすめ。


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もう一丁。キノコのリゾット、フレッシュフォワグラのソテーのせ。あまり知られていないけれど、クリーム系の料理も実は日本酒の得意分野。

「Bergara」の代表作のひとつ“チャルーパ Txalupa”(海老とキノコのグラタンをバゲットにのせてオーブンでこんがり焼いたピンチョ)とは、「温めてサケ・カリエンテ(燗酒)にするほうが合うのではないか」とスルドイ指摘を受けて、こちらがびっくり。さすが美食の街で鍛えられている方々、舌のセンサーが的確です。おそれいりました。

4時間のイベントに足を運んでくれた人は、のべ120人。おかわりしてくれた人が予想以上に多く、なかにはベビーカー押しながら立ち寄って、トータル3杯を引っ掛けていったツワモノのママも。「SAKEをちゃんと味わったのは生まれて初めて。おいしすぎる(Exquisitísimo!)」の激賞コメント付き。こういうのは、ほんとうにうれしい。

普通に営業しているところに割り込んで、あれやこれやのハプニングもあり、お店のオペレーション的にはずいぶん面倒をかけたはず。にもかかわらず、嫌な顔ひとつせずに全面協力で臨んでくれた「Bergara」の皆さんには、ただただ感謝しかありません。

ちなみに、このイベントに付けたタイトルは「1er SAKEO en DONOSTIA」(注:DONOSTIA=サン・セバスティアンのバスク名)」というもの。“SAKEO”は現地でバルのはしご酒を意味する“TAPEO”や“POTEO”の言葉をもじった言い回し。

初回は1店で手いっぱいだったけれど、次はもっと軒数を増やしたいな。SAKEOというからには、はしご酒じゃなくっちゃ。

新たな妄想が炸裂中であります。

 

 

 

 

 

協会ライター:堀越 典子(ほりこし・のりこ)

フリーライター。酒・食・旅をテーマに食の専門誌、一般誌、PR誌などに取材記事を寄稿。取材&休暇でスペインを訪れること20数回。ここ数年はサンティアゴ巡礼、日本酒をスペインに紹介する活動が新しいライフワークに。スペイン語による自身のブログEl Sake Bla Blaで日本酒情報を(細々と…汗)発信中。

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