舞台”El Tigre de Yuzu” -柚子の虎- フェラン・アドリアと壬生の物語

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舞台”El Tigre de Yuzu” -柚子の虎-
フェラン・アドリアと壬生の物語

こんにちは、協会ライターの岩澤です。

夏真っ只中のバルセロナでは、毎年恒例の国際舞台芸術祭Grec Festivalが開催されています。

中でも今年、大きな注目を浴びた舞台が “El Tigre de Yuzu” -柚子の虎-。

世界一有名な料理人フェラン・アドリア氏と、彼が多大なる影響を受けたという
日本では知る人ぞ知る懐石料理店「銀座 壬生」の大将、石田廣義氏の交流を
描いた作品です。

上演に先立って行われたプレパーティーでは、フェラン・アドリア氏はもちろん、壬生の石田ご夫妻と
その関係者約40名が日本からかけつけ、作品の完成を祝福。

この二人の天才料理人の出会い、交流、絆に感銘を受け、4年以上も前から舞台実現を目標に
奔走してきたプロダクションKaiseki Teatreの代表者であり俳優のイサック・ラサロ、ルジェール・サヌイも
石田夫妻と感動の再会を果たし、舞台への意気込みを語りました。

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(プレパーティにて: 左より ルジェール・サヌイ、石田登美子氏、石田廣義氏、フェラン・アドリア氏、
イサック・ラサロ)

長い月日をかけ、多くの人のサポートを受け、制作スタッフ、演出家、8人の俳優の
情熱、エネルギー、愛を込めて完成したこの舞台。

去る7月3日、日本からの御一行40名およびフェラン・アドリア氏をはじめとする
スペイン料理業界の名だたるシェフたちを含む満員の観客に見守られ、初演の幕があがりました。

最小限の大道具・小道具のみで展開する舞台ですが、演出家ルジェール・ジュリアが創りだす空間は、
見事に見ている私達をカタルーニャから東京へ、壬生からエルブジへ、時には安寿様の元へと
連れ出します。

この物語に息を吹き込む3人の日本人俳優と5人のスペイン人俳優は、カタルーニャ語、スペイン語、
日本語をはじめとする多様な言語を自在にあやつり、実に器用に複数の登場人物を演じ分けます。

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料理人、料理がテーマの作品にもかかわらず、厨房や調理器具、料理そのものが舞台に登場することはありません。
リズミカルで無駄のない振付と音響・映像効果のみでこれらを完璧に表現する様は一見の価値あり。

特に、クライマックスのフェラン・アドリア氏と石田氏の料理の饗宴シーンは圧巻でした。

フェランを演じたスペイン人俳優イサック・ラサロ、大将こと石田氏を演じたスペインで活躍する日本人俳優アンディ・福留の
魂がこもった一糸乱れぬ手の動き、息遣いに観客全員が息を飲み、まるで会場全体の時が止まったようでした。

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(フェラン・アドリア氏を演じたイサック・ラサロ、石田廣義氏を演じたアンディ・福留)

カーテンコールでは、満員の観客から割れんばかりのスタンディングオベーションが送られ、
フェラン氏、石田ご夫妻も壇上へ。スタッフ・役者の労を労い、舞台成功を祝福。
温かい抱擁と握手を交わす感動的なもう一つの舞台がそこにありました。

3日間続いた公演は、連日満員の観客と大喝采を受け、無事に千秋楽を迎えました。

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スペインと日本、遠く離れた場所で生きてきたこの二人の天才料理人が、互いの国を訪れ、
見たことのない料理に出会い、感動し、そこに共通点を見出し、本質に戻ることができた。
この出会いと感動の旅の終着点は日本!日本公演実現の日まで、この旅は続きます。
脚本の日本語訳という形で制作チームに加わった私から、今後も本作のレポートをお届けしたいと思います。

協会ライター 岩澤 亜希子

外国語大学でスペイン語を専攻し、在学中にスペイン短期・長期留学を経験。 卒業後、大手電器メーカー勤務を経て、念願だったスペインでの就職切符を手にバルセロナに移住。 2008年には、サラゴサで開催された国際博覧会(サラゴサ万博)の日本館職員としてスペインー日本の架け橋となるべく奮闘。 在西12年を迎える現在、商談・アテンド通訳、映像・脚本翻訳、コーディネータ業に携わるほか、趣味の食べ歩きが高じて、総合旅行情報サイト「トラベルコちゃん」にてバルセロナのグルメ情報を執筆中。